ただ、自分にとってはそれがメルカリを成長させる原動力になりましたし、恐怖心があったからこそ頑張れるという側面もあったのかなと思います。あとはミクシィを退職してからメルカリに入社するまでに1年半くらい“何もしていない期間”があり、その期間があったからこそ、死ぬ気でメルカリの成長に向き合えたんだと思います。
──逆算思考で考える、という側面においてミッション・ビジョン・バリューの存在も大きかったのでしょうか。
そうですね。メルカリはミッション・ビジョン・バリューを何より大事にしていますし、自分も常にミッション・ビジョン・バリューを口に出すようにしています。
それはなぜかと言うと、経営者は会社を経営していくと次第に会社の人格と自分の人格を同質化させてしまいがちだからです。その結果、意思決定が経営者の価値観のもとで行われるようになります。そうすると、会社が経営者の器以上に大きくなっていきません。だからこそ、メルカリはミッション・ビジョン・バリューを策定し、それを実現するためには何が必要かを考えるようにしました。その考え方がベースにあったからこそ大胆な意思決定もできますし、ユニークな人事制度などもゼロベースで考案することができたと思います。
新しい挑戦を続け、グローバルで勝つ。メルカリ、次の10年
──メルカリには各分野のトッププレイヤーが集まっており、過去には「人材のブラックホール」と呼ばれていたこともありました。メルカリが創業期から優秀な人材を採用し続けられたのは、なぜだったのでしょうか。
優秀な人材を集めることが、アウトプットの最大化につながると思っているので、進太郎さんも自分も採用には意識的に時間を割くようにしていました。優秀な人たちが「メルカリで働きたい」と思えるような採用ブランドの構築は創業期から意識していましたし、その点においてもミッション・ビジョン・バリューの存在が大きかったと思います。
個人的には採用において、『ウォー・フォー・タレント』(翔泳社)という書籍に書かれている「これからのリクルーティング戦略」の項目をすごく参考にしました。経営陣も毎週の全社定例で「良い人がいたら声をかけてください」と言い続けていましたし、何より事業が右肩上がりで成長しており、社内に良いモメンタム(勢い)が生まれていたからこそ、全員が自然とリファラル採用をやっていました。採用ブランドも大事ですが、それ以上に事業がきちんと伸びていることも採用においては大事だと思います。