この10年間の中で、当時が一番「終わった」と思った瞬間でもありましたが、結果的には何とかなったので、本当に良かったなと思います。

「逆算思考」で一気に突き抜ける、メルカリ成功のターニングポイント

──また、メルカリが成長するきっかけとなった出来事のひとつに、2015年に発表したヤマト運輸との提携があると思っています。

自分が“いちユーザー”としてメルカリを使っていた際に感じていた不満が「配送が面倒くさい」ということでした。この課題を解決するには、大手の運送会社と提携するしかないと思っていたんです。ミクシィ時代、ミクシィユーザーであれば、相手の住所や本名が分からなくても年賀状を届けられる「ミクシィ年賀状」というサービスをやっていた経験もあり、この仕組みを活用する形で、何か配送サービスをつくれそうだなと思い、2014年2月14日のバレンタイデーの日にヤマト運輸さんに提案をしに行きました。

そこでは「全国一律」「定額」「エスクロー(取引保全)の導入」という3本柱で配送サービスの提案を行い、翌年の2015年にサービスが開始されました。

個人的な感覚としては、メルカリが成功している状態を起点に、そこから逆算する形で「今後何が必要になるか?」を考え、課題を潰していっているというイメージです。

──逆算思考でさまざまな施策を展開していった結果、メルカリは短期間で急成長を遂げたと思います。ただ一般的に、多くの会社は逆算思考ではなく、足し算で物事を積み重ねていく「積み上げ型」の思考をとりがちです。なぜ、メルカリは逆算思考で大胆な意思決定をすることができたのでしょうか。

それは「勝ち切らないと死ぬ」という危機意識があったからだと思います。ミクシィ時代、SNSを展開している会社は他にもたくさんあったわけですが、そのほとんどが潰れていったんです。結果的にミクシィは勝ち残ることができたのですが、その時の経験から競争が激しい業界では1位にならなければ、それ以外は死んでいくだけだということがわかって。その恐怖心や危機意識が今もあるからこそ、自分はずっとWinner Takes Allと言い続け、とにかく1位になることだけにこだわり、あらゆる施策を考えてきました。

メルカリを“勝者”に導いた10年前の意思決定、小泉文明氏が振り返る「成功のターニングポイント」
 

突き抜けて圧倒的な1位になろうと思ったら、積み上げ型ではなく逆算型で大胆な意思決定をしていくしかありません。2014年当時、テレビCMに数億円の資金を投資するという意思決定に対して恐怖心もありましたし、ヒリヒリする感覚も味わいました。