卒業後は、一度リセットして新しいことを考えてみたいと思い、自分が行きたい場所へ行ったり、長期で海外に滞在して友だちと交流したり、AKB48時代にはできなかったことを経験したりして、そうやって視野を広げるように過ごしていたんです。

そのなかで「卒業した後もファンの人たちとコミュニケーションをとりたい」と思うようになり、まずはメディアを作ろうと考えました。今までは「メディアに呼ばれる側」だったので自分自身がプラットフォームになる方が新しく楽しいことができるんじゃないかと思いそのためのアプリも作っていました。

発信内容として決めていたのは「自分の好きなことやライフスタイルを共有できるクローズドなコミュニティを作りたい」ということでした。そこで、ファンの人たちが「小嶋陽菜」の何に注目しているのかを考えてみたところ「ワンピース」というキーワードにたどり着きました。

当時、私がInstagramに投稿したものがファンの人たちに反響があるという現象も起こっていたので「自分が着たいと思える洋服を少しだけ作って販売できたらいいな」とも考え始めていたんです。今思えば、これがHer lip to誕生の大きなきっかけでしたね。

福田:「好きなものを少しだけ作って販売できたらいいな」の考えが、どのようにHer lip to誕生へつながったのでしょうか?

小嶋:完成間近だったアプリをリリースできなかったことですね。というのも、アプリは当時私1人で動かすには難しく、SNSのように好きなタイミングで投稿できなかったり、制作コストもネックでした。

「これは続かないな」と思い、アプリ開発をやめることにしたんです。でも、すでにオリジナルの洋服が何着か仕上がりつつあったので「洋服だけでもお客様に届けなくちゃいけない」と思い、急きょブランドを立ち上げて販売を始めました。それが現在のHer lip toにつながっています。

嬉しいことに、洋服の販売はファンの人たちにも好感触で、SNSを通じて拡大していきました。とはいえ、所属事務所のスタッフ数人と私だけという小さい規模で始めたので、お客様の期待やブランドの成長に対してどんどん手が回らなくなってしまい……。「ファンの人たちの熱量に応えるには組織化したほうがいい」と考え、2020年にheart relationを創業しました。ちなみに、アプリはリリースしませんでしたが、自己発信はVlog(動画ブログ)というかたちで現在も続けています。