サンクコストを気にしない意識が紡いだ“今”
福田:Her lip toは少人数で始めたとのことですが、まず何から着手したんですか?
小嶋:ODMメーカーに依頼し、少ないロット数で洋服を作りました。その後、ネットショップ作成サービス「BASE」を使ってECサイトを立ち上げ販売をスタートしました。さまざまなサービスが揃う今の時代は何事も小さく始めやすいですし、「小さい規模なら失敗しても“そんなこともあったな”と笑って振り返られる」という考えもあったおかげで失敗を恐れず、勇気を出して一歩踏み出せました。
福田:AKB48時代の経験が役に立ったときはありましたか?
小嶋:今の仕事すべてにAKB48時代の経験が活きています。発信力やお客様とのほどよいコニュニケーションという点に関しては、特に役立っているかもしれないですね。
一方で、アパレルに関する知識はまったくない状態からスタートしているので、いろいろな局面で「こういった要素も必要だ」「倉庫代はこれだけかかるのか」といったことは走りながら学んでいました。AKB48時代はファッション誌の仕事もしていたので、そこで知り合った人にアドバイスをいただくこともありました。
福田:AKB48の卒業とブランドの立ち上げ、どちらも小嶋さんが持つ「目の前のことに向き合う」という姿勢が中心になっているように感じました。結果として今のブランドを確立できていますが、不安などはなかったんですか。
小嶋:その時々の選択肢の積み重ねで“今”があるので、不安がなかったと言えば嘘になります。でも私は、AKB48で積み上げてきたことに強い自信を持っています。それもあり、「なんとかなるはずだ」と考えていましたね。
福田:そう考えると、小嶋さんはサンクコスト(過去に行った投資に対するコスト意識)があまりないタイプですよね。「これだけ頑張ってきたのだから」という考えが邪魔をして次へ進めない場面は多々あります。小嶋さんの場合は「今までやってきたことは自信になっているから」と、過去に未練を持たずに突き進むマインドがあるように感じました。
以前にも小嶋さんと私は対談をしたことがありますが、そのときにAKB48のプロデューサーである秋元康さんから「自分に飽きないことが大事」という名言をもらったと話していました。まさに、その名言を体現しているんですね。
小嶋:秋元さんは良いことを言うんですよね(笑)。確かに、「今までやってきたことだから」という考えにとらわれないように意識しているところはあります。