「女性らしさ、を選んでいこう」の一文が誕生するまで

福田:次は今年(2022年)の7月にオープンしたHouse of Hermeに込めた想いを聞きたいです。もともとは、小嶋さんが描く世界観を共有する場としてオープンしたと聞いています。

小嶋:そのとおりです。Her lip toはECサイトでの販売がメインですが、期間限定のショッピングイベントなどを年に10回くらい展開していたんです。そのなかでリアルの大切さを感じ、お客様と深く交流する場がほしいと思っていました。そのためアパレルショップではなく、ブランドの世界観を体験できる空間としてHouse of Hermeを2022年7月にオープンしました。

先ほど話したアプリも、もともとはファンの人たちとやりとりができる「箱」がほしいと思ったことから作り始めていました。今度は「お店」というかたちで、お客様とのコミュニティを作れたんじゃないかと思っています。

福田:House of Hermeは、小嶋さんのYouTubeでルームツアーもしていました。内装や家具はすべて小嶋さんがクリエイティブディレクターとしてセレクトしたと聞いています。どういった点にこだわったのでしょうか?

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小嶋:ブランドを体験できる空間なので、私の想いやエッセンスを細部に至るまで詰め込みたかったんです。だから壁や床など、インテリア一つひとつを自分でセレクトしました。なかには日本にはないインテリアもあります。Instagramでも1日中ディグって(編集部注:ディグる=情報を探す・発見するという意味)いて(笑)。URLもないような小さなお店で紹介されているインテリアがほしいと思ったら、自分から直接その方にDMすることもありました。

福田:小嶋さんがDMを送ったんですか?

小嶋:そうです(笑)。「返信は来るかな?」と思いながら、メッセージを送りました。

福田:ディグっていたということは、リサーチにも時間をかけていたということですよね。こだわりを実現する過程で大変だったところはありますか?

小嶋:大変だったのは、コロナ禍による物価高騰で内装で使う材料費や配送料も高くなってしまったり、あとは商品そのものが届かなかったりしたところです。オープンに間に合わせること自体が大変でしたね。そのあたりは「○日までにやろう」と決めず、「できたところからやろう」と柔軟に対応していきました。おかげで、どうにか乗り越えられました。

福田:小嶋さんの「妥協しないスタイル」は一貫しています。そして、期限を決めるとクオリティとのトレードオフになりがちです。「期限よりクオリティを優先する」と決めたということですか。