「実際、足を運んでみると想像以上に“疲れた様子”で旅行を計画している人が多くいました。それもそのはずで、仕事終わりの時間帯に窓口に行き、数十分待たされてから旅行の計画を考え、予約をしている。旅行の計画は本来、楽しいものです。そうした課題はオンラインで解決できるものだと思ったので、お客さんが楽しく、便利に旅行を予約できるようにズボラ旅をリリースすることにしました」(有川氏)

大手企業と連携。海外旅行のOTAを進めるも新型コロナで瓦解

リリースから2時間で4000件以上の相談が届き、サービスはパンク。5人のズボラ旅チームでは全く対応できない状態に陥ってしまった。その後、チームの体制を強化するとともに、対応フローを改善。1日あたりの新規相談件数に上限を設けることで、受付時間中の相談に対しては当日中に返信できるようにした。

「ズボラ旅は人海戦術が必要な事業モデルで正直、収益化は難しく、サービス自体を拡大させるのは大変ですが、旅行におけるユーザーニーズ、課題を拾い上げる意味ではすごくいい入り口だったと思います」(有川氏)

当初はbot(ボット)を活用したズボラ旅の自動化も検討していた。だが「ユーザーが抱えている課題感が異なるなど、個別のニーズが想像以上にたくさん存在していることに気づきました。それらにカバーしようとすると、僕たちの資本力では時間がかかりすぎてしまいます。また、別々のユーザーに対して同じ提案内容になるケースも多くなり、提案内容の最大公約数が少しずつ分かるようになってきたことで、必ずしも1対1で会話をするのがベストではないと思うようになりました」(有川氏)と判断し、自動化しないことを決めた。

サービスを運営していく中で、新たな要望も見えてきた。海外旅行の際に旅行代理店の窓口で予約をしないと安心できない人が多かったことから、リリースから約1年が経ったタイミングでズボラ旅は海外旅行の取り扱いを開始。その後、ユーザーからの反響も良かったことから、有川氏は事業のメインを海外旅行に決める。

 

「海外旅行のOTAはホテルと航空券を予約できる場所でしかなく、そこには何の優しさもありません。また購入するのも煩雑なため、結果的に多くの人が窓口に行くんです。これまでズボラ旅を運営してきたインサイトを生かして、より手軽に安心して海外旅行の予約をできるように海外旅行のOTAを立ち上げることを決めました」(有川氏)

ズボラ旅で旅行を取り扱ってきた実績や信頼をもとに、2019年の夏頃からアライアンス(提携)に動き始める。結果的に半年がかりで世界最大手の旅行予約サイト「エクスペディア」と宿泊施設の全在庫を提携したほか、予約発券システムを手がける「アマデウス」と提携し航空券も手配できる環境を整備。「これでホテルと航空券の在庫を日本で一番保有している状態にできました」と有川氏は語り、それらの機能をプロダクトに落とし込んでいくタイミングで新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始める。