予期せぬ方針転換、攻めの資金調達も実施

「2月頃から旅行の需要が少しずつ減り始め、『ヤバいのではないか……』と感じていました」──有川氏は振り返るが、緊急事態宣言の発令に伴う休業要請や外出自粛の協力要請などで旅行に行く人はほとんどいなくなり、結果的に会社の売り上げは95.5%減少。業績はどん底の状態にまで落ち込んでしまった。

「これは僕たちに限った話ではなく、旅行のマーケット自体が壊滅的なダメージを受けてしまいました。そこで改めて、僕たちは何をすべきなのかを考え直しました」(有川氏)

直前まで海外旅行のOTAの仕込みをしていたため、足元の資金もギリギリの状態にあったことから、有川氏は新型コロナウイルス感染症特別貸付などの融資の仕組みを活用して足元の資金を確保しつつ、新たに既存株主のANRI、TLMのほか個人投資家を含めた約1億円の資金調達を実施。「攻めていくための資金」(有川氏)を確保した。

「(アフターコロナの世の中でも)旅行自体がなくなることはないと思っているので、需要が落ちているタイミングでどう戦っていくかが大事です。需要が戻ってきたタイミングでユーザーから必要とされるサービスであるために、調達した資金を使ってサービスの改善を重ねていきました」(有川氏)

実際、有川氏は新型コロナウイルスの影響で旅行マーケットの実態はどうなっているのか、それを踏まえて各社はどういった動きをしようとしているのか。ひたすらリサーチを行い、旅行の需要がどう戻ってくるかを、なるべく精度高く予想できるようにした。

「旅行業自体、もともと伝統的なプレーヤーたちが強大な資本力で戦う市場だったのに、新型コロナウイルスで需要が完全に落ち切ったら、広告は止まり、資本の殴り合いが一切起きない状況になったんです。また需要が戻り始めるタイミングで資本の殴り合いは再開しますが、戻り始めのタイミングは各社どこに資本を入れていいのか分からないのでお金が浮きます。そこで上手いこと市場に入れればシェアが獲れるので、どこよりも現状を正しく理解し、変化に合わせた機能をどこよりも早くプロダクトに落とし込み、いち早くリリースしてユーザーに使ってもらうことを徹底しました」(有川氏)

「ユーザーファースト」で正確な情報をいち早く提供

その姿勢が成果に結びついたのが、Go To トラベルキャンペーンだ。有川氏は「Go To トラベルキャンペーンを起爆剤にして、旅行の需要が少しずつ戻っていくことは誰の目にも明らかだったので、Go To トラベルキャンペーンがどうやって需要を回復させていくのか、その予想を立てて上手くキャンペーン乗ることを意識しました」と語る。