長年活躍していたエンジニアなのに年齢とともに仕事がなくなる。若手エンジニアはキャリア形成に悩んでいる。エージェントとしてフリーランスエンジニアの紹介に立ち会う中で、内田氏は、スキルが不足していて、3年後にはどうなるかが気がかりなエンジニアと相当数出会ったという。だが、そこをサポートする機能がエージェントにはない。

象徴的な出来事として内田氏が語ったのは、50歳のエンジニアとの出会いだ。昔はバリバリ活躍していたが、年齢とともに単価を下げても仕事がなくなりエージェントに登録してきたという、その人物。内田氏は彼にスタートアップでの仕事を紹介したが、SIerでの受託開発経験ではスタートアップの現場で必要なスキル・キャリアが積めておらず、うまくフィットしなかった。

「何とかしたいけれども、どうしようもありません。自分たちの仕事の意味とは何かを深く考えました。個人的には、私が15歳の時に亡くなった父が当時ちょうど50歳だったので、彼を父と重ねて見ているところもありました。古い男性社会に生きてきて『仕事が生きがい』みたいなところもある人が、これから正社員で雇ってもらえるところもない。5年ぐらいは単価を下げて食いつなげるかもしれないけれど、この人生100年時代、その後はどうするんだろう。そう思うと強烈な違和感がありました」(内田氏)

Value market代表取締役 内田裕希氏
Value market代表取締役 内田裕希氏

少子高齢化で労働人口減が進む中、紹介している人材が必ずしも成長していないこと、同じスキルで現場を転々として、年齢とともにだんだん仕事がなくなるという状況を何とかしたい。内田氏は、今、その場だけで必要とされるスキルだけを習得していくという、エンジニアの短期的なキャリア形成に課題があると考えた。

「中長期で見た時に、いろいろな現場を経て少しずつレベルが上がることで、新しく受け入れる会社も喜ぶ、というのが本来あるべき姿。このままでは市場自体も縮小してしまうのではないかという危機感もあり、この業界の課題を解決するために、サービスを一から立ち上げることにしました」(内田氏)

「労働集約構造」「情報の非対称性」を解体するサービス

内田氏はエージェントの「労働集約構造」と「情報の非対称性」を課題の本質として挙げる。労働集約構造については、スピード重視、かつ大量の提案をエージェントの人海戦術でこなしていることが要因だ。エージェントは高い広告費で人材を集めるが、人材の見極めはできないため、「数打ちゃ当たる」の大量提案を行う。数をこなすために多重下請け構造もでき、手数料もかさむようになる。