Appleは自社で設計・開発するSoCにハイレベルな処理性能と、優れた電力効率を合わせ持たせることに注力してきた。SoCに加えて、ハードウェアとソフトウェアを単独で開発できるシステムカンパニーである強みを活かすことで、先進的な機能やサービスを迅速に形に変えてユーザーに届けることができる。今後、開発環境の効率化が進めば、M1を搭載するMacをさらに手頃な価格でユーザーに提供することも可能になるだろう。
Appleシリコンを搭載する3種類のMac製品
今回、Appleが発表したM1を搭載する新製品は薄型・軽量のエントリー向けノートPC「MacBook Air」と、より高性能なノートPCの「MacBook Pro」、そしてディスプレイを持たない据え置き型の「Mac mini」だ。MacBook AirにはGPUのコア構成が若干違うバリエーションもあるが、新製品が搭載するM1は基本的に同じチップだ。
M1は今年の秋に発売されたiPad Air、iPhone 12シリーズが搭載する「A14 Bionic」と同じ5nmプロセスルールによって製造され、ビルディング・ブロック(ロジックや機能をまとめてブロック化すること)による設計手法が共通化されている。高性能CPUコアのアーキテクチャも同じだが、コア数を増やしてMacの用途に最適化を図った。GPUはコア数を2倍に増やしていることから、特にグラフィックス処理に関してはM1の本領が発揮されるはずだ。
オンラインイベントの最中、Appleが新しいMacBook Airの処理性能をアピールする例として、「同じクラスのWindowsノートPCの3倍も処理速度が速い」という言葉を使って、他社製品との比較を前面に打ち出していたことも印象的だった。
ノートPCのエントリー製品に位置付けられるMacBook AirはすべてのモデルがM1搭載機に入れ替わる。1世代前のモデルからは13.3インチのRetinaディスプレイとシザー構造のMagic Keyboardを継承する。デザインも大きな変更点はないが、冷却用ファンを持たない設計としたことで静音性能が高くなっている。
ノートPCの上位機種であるMacBook Proは13.3インチのモデルにM1が搭載される。1世代前のモデルと比べてCPUは最大2.8倍、8コア構成のGPUは最大5倍もの高速化を達成した。プロフェッショナルの映像製作のニーズに応える高い性能を備えたプロ向けノートPCだ。