再建に不可欠な新たな収益の柱

 これから東芝は、上場廃止によって不特定多数の株主の目にさらされることがなくなり、経営陣は多様な利害を調整しやすくなる。事業運営のスピードも高まるだろう。経営陣は、非上場化のベネフィットを最大限に活用し、安定的に収益を獲得できる事業体制を確立することが求められる。

 直近の経営状況は、既存の事業領域の中でも相対的にエネルギー、インフラ事業の収益が安定している。さらに事業運営の効率性を高め、収益率を引き上げる必要がある。また、コスト削減のため再度リストラを実施する可能性は高い。その上で、経営陣は成長期待の高い分野へヒト・モノ・カネを再配分することになる。

 改革を加速することで、経営陣は再建を主導するJIPなどの期待に応えなければならない。JIPは、3~5年程度で東芝を再上場させることを念頭に置いているようだ。投資ファンドのビジネスモデル上、JIPは資金の提供者に期待される利得を提供する必要があるからだ。

 東芝の成長戦略の実行に時間がかかり収益力の回復が遅れると、JIPとの関係も不安定化する恐れがある。もし、そんなことが起きれば20を超える出資企業の足並みは乱れ、東芝の業績回復も難しくなるだろう。

 近視眼的に既存分野での収益拡大を過剰に追求した結果、業績が悪化し経営体力を失った東芝。本来、経営の基本的な役割は、成長期待の高い分野に経営資源を再配分し、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を強化することだ。経営が失敗すると、どれほどの名門企業も破綻は免れない。東芝の失敗は、日本経済にとって重要な教訓になるはずだ。