旅行サイトが絶対に書かない
観光大国フランスの流行

 もちろんフランスには素晴らしいところが無限にある。絵ハガキのように美しい景観。博愛精神にあふれた人たち。ツール・ド・フランス取材時に目撃した、そんなフランスのいいところをたくさん紹介してきたつもりだが、ついに触れたくない事象に遭遇してしまった。

 フランスのイメージダウンになりそうなので、書くことをためらう気持ちもあった。でも、フランス観光を楽しみにしている人や、急増している日本で快適なライフスタイルを維持したい人たちにシラミの恐ろしさを知ってもらうために、やはり現状を報告しておきたいと思った。

 フランス観光親善大使を務めていたこともあるフリーアナウンサーの中村江里子さんも居住するパリでお子さんがシラミ被害に遭ったらしく、その体験談をコラム紹介している。お子さんだけにアタマジラミだったようで、お猿さんのグルーミングのように頭髪にへばりついた卵を専用のクシで取ったという心温まる記述もあった。

 シラミはフランス語でプー「Poux」と、なんともかわいい語感だが、けっこう悩み深い存在である。たいていのフランス人はトイレの後に手をきれいに洗う習慣があり、衛生観念は極めてハイレベルにある。だからシラミ発生が不衛生だからとは限らないらしい。

 どうしてフランスにシラミが多いのかと疑問に思うが、植民地を多く持っていた国だけに移民が多いこと、世界遺産や美しい大自然を見るために世界各国から観光客が押し寄せること、欧州における物流や文化の十字路であることからさまざまな人と物資の往来があることが原因なのではと推測している。2024年には100年ぶりにパリで五輪が開催され、さらに圧倒的な人数が押し寄せるから心配だ。

 私の場合は帰国後にかゆみや炎症を抑える飲み薬と塗り薬を処方されたので、1週間ほどで快方に向かったが、虫に刺されたと分かる痕はしばらく素肌に残っていた。それでも医師の指示どおりに塗り薬を使っていると、しばらくしてきれいになった。