日本の大企業は
やっと変わり始めたか?
徳成 同感ですね。最初からNASDAQ上場を目指してスタートするとか。それで日本国全体で、そういう人たちを応援することが大事です。
「君たち、海外で頑張ってきてね。僕たちは国内を固めるから」みたいなことがあってもいいと思うし、さらに言えば、そのGとLに行き来があってもいい。「ちょっと疲れたから日本に帰ってきて温泉に入るわ」みたいな、ね。
堀内 そしてもうひとつ大事なのは、やはり日本の大企業の変革ですね。昨年、経済同友会の代表幹事にサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が就任しました。新体制になってどのように変わるのだろうと思っていたら、初っ端から激しく変わり始めました。
昨年7月には、新公益連盟と連携協定を結びました。新公益連盟というのは「公益」と付いているように、NPOが中心の団体です。その中でも株式会社形態で上場を目指している会社が、インパクトスタートアップ協会というのを作っています。代表理事を務めているREADYFORの米良はるか氏とか、五条・アンド・カンパニーの槙泰俊氏とか、私が財務顧問をやらせてもらっているライフイズテックの水野雄介氏とか。
それで新浪代表幹事は、新公益連盟と連携を結んで、新公益連盟の人たちをどんどん経済同友会に入れると宣言したわけです。これは画期的なことです。経済同友会というのはけっこう敷居が高くて、上場していない企業の人はなかなか入れなかったですから。
徳成 上場している企業の役員をやっていれば、わりと簡単に入れたりするんですけどね。
堀内 私は森ビルの専務時代に入りました。森ビルは非上場企業なのですが、会社の規模的に合格でして。そこでCFOをやっていたので無条件で入れたのですが、スタートアップとか、あとそもそも業態的に売上が小さいコンサルティング会社などに対しては、ものすごく敷居が高いんです。
ですが、そうした新公益連盟のメンバーをどんどん入れていくということになって、敷居への懸念自体を変えてしまった。すごい変革です。
新浪氏は経済同友会の代表幹事になる前から、「大企業が変わらなきゃダメだ、大企業が変わるなら経済同友会も変わらなきゃダメだ」ということを強く言っていました。今の、全員背広を着てネクタイを締めたグレイヘアの中年男性だけが集まっている経済同友会では完全に立ち行かなくなるということで、大幅な改革を始めたのです。それで今、大きく変わる兆しが見えてきています。
おそらくこの先、メンバー企業も必然的に変わってくると思います。経済同友会には副代表幹事が16名ほどいるのですが、そのメンバーも今や、昔では考えられないくらい、女性とベンチャー企業の創業者が大半を占めています。その構成を見ても、日本も少しは変わり始めたのかなと思っています。
そもそも新浪氏が代表幹事になるときも、反対意見が多かった中、前代表幹事であるSOMPOホールディングスグループ会長の櫻田謙悟氏が押し切ったと聞いています。この人事を見ても変わる兆しが出ていたのですが、それをきっかけに大企業もきっと変わってくる。そしてベンチャー企業はもっと大きく成長していくだろうと思います。
この両輪が変わっていかなければ、日本の経済はいずれ行き詰まります。私自身は、大企業が変わるのは、自分の昔の経験から「無理だろうな」と思っていたのですが、最近雰囲気が違ってきたと思っています。
徳成 そう! 大企業も変わろうと頑張っていますよ(笑)。
(第6回に続く)