相続によって今後30年間、日本全国の金融資産はどのように移動するのか。三井住友信託銀行が試算し、公表したレポートは衝撃的だ。特集『金利で明暗! 銀行絶望格差』(全16回)の#7では、地銀各行が今後直面する、相続をきっかけとした預金流出リスクについて明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
今後30年間の大相続時代
家計金融資産が大移動
三井住友信託銀行から出されたレポートが、地方銀行関係者の間で物議を醸している。そのレポートは、今後30年間続く大相続時代に、地銀各行が直面する「不都合な真実」を示していたからだ。
相続発生時は、地銀にとって絶好のビジネスチャンス。親世代から子世代へ、一定規模の預金や有価証券などの家計金融資産が承継され、子世代と資産運用などの新たな取引が見込めるためだ。
だがレポートでは、相続によって承継される家計金融資産の多くは、子世代が住む東京圏と大阪圏へ移動し、地方の家計金融資産は純減することが、額と共に提示されていたのだ。
家計金融資産の純減──。地銀にとってそれは、預金の流出を意味している。ビジネスチャンスどころか、屋台骨を揺るがす一大事である。
具体的にどの地域・都道府県の家計資産が、どの程度減るのか。そのとき、地銀各行はどのような対策を取るべきなのか。次ページで衝撃のレポート内容を読み解いていく。