朝日新聞も9日に「松本氏のワイドナショー出演 識者『PR機関か報道機関か問われる』」と題する記事を出し、「松本さんが自分の主張だけを述べて番組が終われば、公共の電波を使って片方の主張をPRしているだけになる」という、識者のコメントを採用している。

 こういった報道は、フジテレビや吉本興業に少なからずプレッシャーをかけるものであっただろう。

 そして10日、結局松本さんはワイドナショーに出演しないことが、メディアからフジテレビへの取材で明らかになった。

 ワイドナショーは吉本興業が制作協力でクレジットされており、出演者にも吉本芸人が多いことからも関係の深さがうかがえる番組だ。ネット上では、「松本さんが独断で出演を表明したのではないか」という憶測が飛び、朝日新聞は10日の記事「松本人志さんのワイドナショー出演表明 驚いたのはフジ幹部だった」の中で、「関係者によると、松本さんが投稿した時点ではフジの幹部も出演を把握していなかったという」と報じている。

 松本さんからすると、馴染みのある番組で挨拶する程度と軽く考えていたのかもしれないが、状況がそれを許さなかった。むしろ、独断での出演が叶う権力者であるという印象を強めてしまった感がある。

結局「沈黙は金」だった?
他の芸能人や事務所も他人事ではない

 こうなってくると、松本さんはXで沈黙するのが最も得策だったのではないかと思えてくる。もしくは、最初から全否定で対決的な姿勢を前面に出すのではなく、「事実確認中」とするにとどめることはできなかったのか。たとえば、「事実は否定しますけど、告発者の女性への誹謗中傷はやめてね」ではダメだったのか。

 続報で名前が挙がったたむらけんじさんは、取材に対して報道内容を一部否定しつつも、「記事に出ている方はイヤやったんでしょうね。申し訳なかった」と相手に配慮する姿勢を見せた。松本さんがこのような姿勢を見せれば、スポンサーの対応はまだしも、世論は違ったのではないかと思える。

 糾弾されている状況で自分の思いの丈をネット上に載せるのは、有名人であればあるほど難しい。大物タレントを抱える芸能事務所や有名企業は、今回の顛末を見て他人事ではないと感じているだろう。