「飲みニケーション」よりも
「コミュニケーション」を求める若者たち

 健康意識が高く、コスパ、タイパ重視の若者のアルコール離れは必然の流れだったようだが、逆に今の若者はどんなものに価値を感じるのだろうか。

「今は社会全体が成熟化して、『安くて良いモノ』が手に入ることが当たり前になってきているので、モノそのものの価値よりも、サービスや自分だけの体験に感じる価値の方が強くなっていますね」

 そういった意味では、飲酒はお金さえ出せば誰でもできる体験であり、特別感が薄いことも魅力的に映らない要因なのかもしれない。

「昔から『アルコールが別に好きじゃない』人って一定数いましたよね。ただ飲酒しか職場の上司や先輩とコミュニケーションを取る手段がなかったので、昔は多少嫌でも飲むしかありませんでした。でも今はもう『飲みニケーション』的なものは完全に過去の遺物ですし、若者は求めていません。若者はハラスメントに関する意識も高いので、上司も無理強いしない。だからコミュニケーションに飲酒の出番がなくなってしまったのです」

 こうして、かつては職場でのコミュニケーションの緩衝材だったアルコールの出番は、今ではほとんどなくなった。

「ただ、その一方で、若者世代は意外と職場でのコミュニケーション自体は求めているという調査結果も出ています。若い人については、個人主義でプライベートに立ち入られたくないというイメージが強いですが、日本能率協会が毎年行っている新入社員の意識調査では、個人で仕事をするよりチームワークで働きたいという人や、職場ではプライベートのことも少し話したいという新入社員が8割を占めていることが判明しました」

 では、上司世代はどのように円滑なコミュニケーションの機会を探ればいいのか。

「まず、必要なことについては社内で業務時間内に話しましょう。また、たとえば飲み会をするにしても、昔はよく『とりあえず全員ビールで乾杯!』という空気がありましたが、今はアルコールでもソフトドリンクでも、自分が好きな時に好きな物を頼む、という形で始めるのが理想。さらにダラダラ2次会、3次会まで引っ張るのではなく、2時間と決めたなら、2時間できっちりと終わって解散しましょう。そういうコスパ・タイパのいいコミュニケーションを心がけることが大事です」

 アルコールについては、その価値観も楽しみ方も人それぞれ。上司たちは飲み会で、若者にシビアにジャッジされていることを肝に銘じておいた方が良さそうだ。