モナコ公国やドバイに移住したら
大谷選手の所得税はどうなる?

 アメリカでは州によって州税が定められていますが、世界にはそもそも所得税が存在しない国もあります。

 そういった特有の税制を利用すれば、大谷選手に課される所得税は大幅に節税できる可能性も出てくるでしょう。今回は、「もしも大谷選手が○○へ移住したら?」という観点で、所得税の節税について考えてみます。

(1)もしもテキサス州へ移住したら、所得税が軽減される?

 先述した通り、アメリカでは連邦税という米国所得税の他に、各州で定められた州税が課されます。例えば、ドジャースの本拠地ロサンゼルスがあるカリフォルニア州は、アメリカ国内でも上位の13.3%もの税率がかかります。それに対し、テキサス州をはじめとした七つの州には州税が存在しないなど、居住地によって大きく税負担が異なるのです。

 仮に、大谷選手がカリフォルニア州からテキサス州へ移住した場合、所得にかかる税金は連邦税のみとなり、税負担は大きく軽減されるでしょう。

(2)もしもモナコ公国へ移住したら、所得税はなくなる?

 アメリカでは、州によって税負担が大きく変わるとご紹介しましたが、世界にはそもそも所得税が存在しない国もあります。

 それは、富裕層の国モナコ公国です。高級リゾート地として有名なモナコは税率が低く、モナコ居住者に対しては所得税や相続税、贈与税などの税金がかからないのです。

 それでは、一体モナコがどこから税収入を得ているかというと、それは「付加価値税」です。これは、日本で言う消費税にあたるもので、富裕層にどんどんお金を使ってもらうことでモナコの財政は支えられています。富裕層ほど住みやすい国ということが分かりますね。

 つまり、もしも大谷選手がモナコへ移住したと仮定すると、今回の巨額契約にはアメリカにおける源泉徴収の税率30%のみがかかるため、連邦税と州税を合わせた税率20.3%分のおよそ200億円の節税が可能です。ただし、この税制度はモナコに居住権がある人にのみ適用されるため、注意が必要です。

(3)ドバイへ移住した場合も、所得税はなくなる?

 それでは、モナコと同じく富裕層が集まる国というイメージのドバイへ移住した場合はどうでしょうか。

 ドバイも税率が低い国であり、個人に対して所得税や固定資産税、相続税などが課されることはありません。したがって、将来大谷選手がドバイへ移り住むと仮定すると、モナコ同様、巨額の契約金に対してアメリカの源泉徴収分以外の税金がかかることはないのです。ただし、こちらもモナコ同様に居住権があることが前提ですので、一時的にドバイへ滞在し収入を得たとしても、タックス・ヘイブンの恩恵を受けることはできません。