いま、管理職やリーダーにとって、「チームマネジメント」のノウハウを学ぶ必要性が高まっています。なぜなら、世の中のトレンドの移り変わりが激しくなり、しかも転職が珍しくなくなったことで、「成果を出し続けるチームづくり」の難易度がかつてなく増しているからです。
そこで今回は、1年でチームの業績を13倍に急上昇させた「組織の変革メソッド」を伝授する『チームX』の著者・木下勝寿さんにご登壇いただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の模様をダイジェストでお届けいたします。(構成/根本隼)

売上の7割を「月初」に確保する“すごい方法”とは?Photo:Adobe Stock

「ビリーズブートキャンプ」が売れなくなった理由

木下勝寿 ただ単にいい商品を作って売ればビジネスが成長するのかというと、そんなに世の中は甘くありません。

 2005年頃、米軍のトレーニングを取り入れた「ビリーズブートキャンプ」というエクササイズ用DVDが、TV通販で爆発的に売れました。売れた理由は純粋に「いい商品だったから」です。しかし、販売の絶好調ぶりは長く続かず、はやくも翌年には売上が下がってしまったそうです。

 理由は明快。同じDVDを「もう1枚」買おうとする人が誰もいなかったからです。これは商品ではなくビジネスモデルの問題です。

 一方で、同じダイエット関連商品でも、サプリメントのような消耗品であれば「リピート購入」が前提になります。

 つまり、定期購入してもらえる商品・サービスをどれだけ取り揃えられるかが、事業の安定性と、潜在的な成長力に大きく関わってくるのです。

定期購入のビジネスモデルとは?

 定期購入は、わざわざ毎回注文する必要がなく、毎月同じタイミングに商品が届くので、顧客にとっては利便性が高い。事業者目線でも、「先々の予約」が入っている状態なので、経営が安定するというメリットがあります。

売上の7割を「月初」に確保する“すごい方法”とは?

 定期購入のビジネスモデルは、上の図を見ていただくとイメージが湧くと思います。

 新規顧客を獲得し続けつつ、定期顧客をしっかりと引き止められれば、売上の総和は時間の経過とともにどんどん増えていきます

 私が代表取締役社長を務めている「北の達人コーポレーション」(以下、当社)でも、売上の7割が定期購入、つまり月初の段階で月商の7割を確保しています。残りの3割が、新規顧客の獲得分となります。

「広告投資管理」の2ステップ

 通信販売は店舗を持たないので、定期購入者を増やすには、広告のパフォーマンスが生命線です。そこで、当社では「広告投資管理」を2ステップで行なっています。

1)1年LTVを計算する
1年LTV…ある商品を定期購入した人が、年間に支払う平均金額
(1か月でやめる人もいれば、1年間買い続ける人もいるので、平均値を割り出す)

2)広告の上限CPOを1年LTVの7割に設定する
CPO…お客様1人の獲得にかかるコスト

Ex. 3000円の商品の1年LTVが1.5万円の場合、CPOの上限は約1万円
⇒CPOが1万円で、商品の値段が3000円だと、1か月目の時点では7000円の赤字です。ところが、年間では1.5万円の売上になるので、5000円の黒字になります(粗利率100%の場合)。

 このように、1年LTVと上限CPOを照らし合わせながら、定期購入につながる良質な広告をつくっていきます。

集客力が最盛期の6分の1に急減

 当社は、2016年から2020年にかけて、広告活動を軸にした「Webマーケティング」を武器に、業績を20億円から100億円にまで急拡大することができました。

 ところが、ここから当社に危機が訪れます。まず2020年の後半、新規顧客の伸びが止まりました。さらに、集客の急減により「停滞ムード」が生まれ、2020年から2021年にかけて退職者が続出してしまいました。

 そして、ついに2021年12月には、新規の集客が最盛期の6分の1(1000人/日⇒160人/日)にまで落ち込んだのです。

 「このままではマズい」。経営者として意を決した私は、当社の問題点を徹底的に洗い出し、チームのあり方の根本的な変革、すなわち「チームX」を行なったのです。

 この「チームX」によって、2022年10月には1000人/日という水準を回復し、さらに2023年1月29日には3539人/日という過去最高記録を達成しました。1年前の同日は278人/日だったので、わずか1年で13倍になったということです。

 どのようにして、このようなV字回復を成し遂げることができたのか。次回は、業績が6分の1にまで縮小した原因である「企業組織病」について説明します。

(本稿は、新刊『チームX』刊行記念セミナーの講演ダイジェスト記事です)