違う時期に数回、現地に足を運ぼう

 多くの相談者と対峙してきたことから、同センターには自ずとさまざまな知見が蓄積されている。本稿の肝としてぜひ聞いておきたいのは、地方移住に失敗するケースの具体的な要因だ。

「まず、何よりも重要なのは、“誰と・どこで・何をして”暮らすのか、具体的なイメージをあらかじめ固めておくことです。当然それによってふさわしい移住先も変わりますし、家族やパートナーがいるなら、5年先、10年先の生活まで踏まえてじっくり話し合いながら検討すべきです。地方移住で最も怖いのはやはり、“こんなはずじゃなかった”という事態ですからね」

 移住先候補の地域に関する下調べは、インターネット上の情報だけに頼るのはリスキー。「たとえば夏と冬ではまるで環境が異なる地域も少なくありません。現地訪問は時期を変えて数度に分けて行うのがいいでしょう」と高橋氏はアドバイスする。

 また、子どもが小さなうちは快適に暮らせていても、中学、高校と進学するプロセスで、どのようなイレギュラーが起こるかわからない。長期スパンの視野は不可欠だ。

 移住後の就労や住居について、積極的なサポートを行う地域も多く、移住者への補助金制度を用意しているところも少なくないが、そうした条件に釣られて即決してはいけない。地方移住の成功者とは、入念な情報収集と事前準備、そして現地で得られる生の情報を生かして、失敗リスクを極力抑えた人たちなのだ。