鍋割山の山頂で、あつあつの鍋焼きうどん
神奈川県の丹沢は、主峰蛭ケ岳をはじめ数々の山がつらなり、さらに無数に派生した尾根、急斜面、深い渓谷、大小さまざまな滝があってバラエティに富んだ山歩きが楽しめる。
「丹沢の滝が凍ると、氷壁の練習のためによく登りに行きました。丹沢の中でも登りやすく展望も良いのが、鍋割山です」
冬の鍋割山の頂上には二つの楽しみがある。一つは、丹沢の山並みを従えた優雅な冠雪富士の姿が望めること。そしてもう一つは、山頂であつあつの鍋焼きうどんが食べられることだ。
「頂上にある山荘の名物です。鍋割山で鍋焼きうどんとはダジャレ風ですが、具だくさんでおいしいです。夏にも食べられますが、温かさが体にしみわたる冬は格別です。昔の山小屋は泊まれればいい、休めればいいという雰囲気でしたが、最近は、おいしい食事が食べられるところが増えてきました。トイレもきれいですね」
「鍋割山荘」は宿泊は受け付けていないが、連日登山客が休憩に訪れる。鍋焼きうどんは人気で、1時間待ちということも。登りやすい山だが、距離が長いので、休み休み時間に余裕をみて登りたい。
最後に靴と防寒についてアドバイス。
「今回ご紹介した山は、靴はミドルカットで大丈夫です。“カット”とは靴の足首周りの高さで、くるぶしの上まで覆われるタイプがハイカット。ミドルカットは普通の靴よりは高く、ハイカットよりは低い。足首を覆うことで足をひねりにくくなります。超低山の荒幡富士は、登山靴でなくても大丈夫。歩きやすい靴で歩いてください」
そして、冬は特に防寒対策を万全にしたい。手袋や帽子をつけて末端を冷やさないように。首をあたためるネックウォーマーも便利だ。重ね着をして、「歩いて暑くなったらぬぐ、寒くなったら着る」といった風に、こまめに着脱しよう。中村さんは、下着はウールを愛用している。
「冬山には、保温ボトルを必ず持って行きます。あらかじめコーヒーやお茶などを入れていくこともあれば、湯を入れて行って、山でコーヒーをドリップすることもあります。白銀の頂上でも、木々が葉を落とした澄んだ冬空の下でも、冬山で飲む温かい飲み物は心身にしみわたるようにおいしいです」