多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いているできればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。会話が中だるみして話がなかなか進まない時のテクニックを紹介する。

頭がいい人のテクニックPhoto: Adobe Stock

話が進まない、なのに時間がない

 話が予定どおりに進んでいないことに気づいたときは、残りの時間内でタスクをすべて終えなければと、どんな人でも焦ります。

 足を引っ張っているのは、進捗状況にかかわらず全員を襲う「中だるみ」です

 時間が過ぎていくのはわかっているけれど、疲れたから中だるみ。
 いろいろがんばって決めたからと、ホッとして中だるみ。
 あるいは、議論が紛糾して、身動きが取れずに固まってしまうことも……。

 では、どのように仕切り直せばいいのでしょうか。

×「そろそろ時間がなくなってきましたね」

 当たり前のことを口にして、「急ぎましょう、巻きでいきましょう」などと言っても、中だるみで伸び切った空気は簡単には動きません。

時間と成果を伝えよう

 そうかと言って、「たるんでますよ!」と喝を入れたら…? スポーツの強豪チームなどには上手に喝を入れる監督もいるようですが、通常は「やらされ感」や反発が増すばかり。そこでこのひと言を。

○「この30分でAとBはできました。ということは、残り30分もあれば、我々は結論を出すところまでいきますね」

 参加者は軽い混乱状態にあって時間を忘れているかもしれませんし、ここまでの成果を自覚していないかもしれません。そこで、まずは時間と成果を伝えて冷静かつ客観的になってもらいましょう。

 まねをするなら強豪チームの監督ではなく、視聴者の集中力を高めるプロの技をもった実況中継のアナウンサーです。

「ゴールまで折り返しというところで、得点は8対30。0対20が続いていましたが、8点入れて追いつく手掛かりを得ています。残り時間29分で…」

話が中だるみしてきた

重要3ステップ

 アナウンサーはこんなふうに今までの試合経過を振り返り、残り時間を正確に報じます。それを受けて解説者が、「それにはA選手がゴールを決めて……」などと作戦を考察します。この技を取り入れるとうまくいきます。

 ここまでできていること(進捗の認知)
 今の状況(現状の客観視)
 私たちのゴール(ゴールの再確認)

 この3点をまとめるということです。プロジェクトの進捗確認や、コーチングなどの場面でも応用できる3ステップです。

中だるみを消すテクニック

 同じひと言でも、すべて問い掛けにすると自分ごとになってより効果的です。

「今の状況をどう思いますか? この30分で何ができたでしょうか? 私たちのゴールは何でしたか? ゴールするには残り30分をどう使えばいいでしょうか?」

 この言葉で、参加者は主体的に考えてくれます。心理学者のブリューマ・ゼイガルニクによれば、人の脳には「空白効果(ゼイガルニク効果)」と言って、わからない状態(空白)が続くと、早くその状態を解消しようと答えを探し続ける特性があります。問い掛けでこの効果を引き出そうというわけです。

 希望をもって明るく楽しく伝えるとさらに効果的です。

「あと20分です。残り2件の検討事項もこのリズムで行けそうですね。」

 このように残り時間を含めた実況中継をこまめに行うと、タイムキーピングができ、中だるみ対策にもなります。全員が笑顔で、時間内にゴールするための工夫です。