世界各国で飲酒規制、WHOの「世界戦略」がついに日本へ
WHOはずいぶん昔から、タバコと共にアルコールのリスクに警鐘を鳴らしてきた。具体的には精神神経疾患、心血管疾患、肝硬変、がんなどの危険因子であるとともに、HIV/AIDS、結核や肺炎など一部の感染性疾患とも関連があり、さらには交通事故、暴力、自殺、傷害にも影響を及ぼすというのだ。
そこでWHOは2010年5月、第63回総会で「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を全会一致で採択した。
それから14年、「世界戦略」というのはだてではなく、国連の影響力が強い欧米を中心にWHOは「飲酒規制」を広めてきた。
日本で暮らしているとあまりピンとこないだろうが、海外では「飲酒」は規制されて当たり前だ。路上で酒は飲めないし、どこでも売っていいものでもない。若者に人気の俳優やアイドルが「ぷはっ」なんてビールを飲み干すCMがテレビで流せない国も多い。そして日本の居酒屋のような「飲み放題」が禁止という国もかなりある。
では、これらの国は自然発生的にみな同じような「飲酒規制」をしたのかというと、そうではない。「証拠に基づく政策選択肢を明確にし、加盟国へ技術的支援を行い、健康志向を監視、評価する」(国連広報センターHPより)ことを目的とするWHOの働きかけあってのものだ。
しかも、実は今、世界では「酒」に対する解釈も変わってきている。かつて「百薬の長」なんて言われて、ほどほどに飲むなら血行にいいみたいな話もあったが、最近の海外の研究の中では「少量飲んでも体にいいことはない」という結果がポツポツ出てきた。
そういう世界的な潮流の中で、今回初めて厚労省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表したという事は、WHOの「世界戦略」が遅ればせながら日本にも上陸してきたとみるべきだろう。