今回公開された劇場版は、2部作のうち第1部に当たるもので、原作でも特に人気の高かった、因縁ある高校との試合のエピソードが描かれている。アニメシリーズは4期まで制作・公開されているが、時系列としては本劇場版が第4期の続くものとなっている。

 これを筆者も鑑賞して参ったので、その感想を伝えるとともに、『ハイキュー!!』原作、およびアニメ未履修の人たちに、ハイキューの持つ(仕事や人生に通じる)普遍的な面白さを語っていきたい。

 なお、もともと原作の過剰なファンである筆者は「ハイキュー」と名のつくものをすべて崇めてしまう偏った傾向を発揮する恐れを自覚しているので、本劇場版に対する「いまいち」といった感想も併せて紹介し、それをもって中立さを若干取り戻した「万人向けの映画レビュー」としたい。

試合の迫力と回想による掘り下げで
深みを増す「1点の重み」

 まず、これはテレビアニメ版からそうだったが、試合の迫力が凄まじい。選手たちがコート内を駆けて、跳び、打って、それをレシーブし、今度は別の選手がトスを上げ、スパイクを打って……という一連の応酬が、生々しく臨場感ある効果音を伴って繰り広げられていく。相手のスパイクをレシーブする際の、ボールが肉を打ったときの激しい音などはいちいちこちらの身が縮こまりそうなくらいである。

 試合中に流れる時間の緩急は自在であり、あるときはスローモーションで、あるときは現実の時間経過に等しい引き延ばしなしのスピード感でと、その都度効果的な見せ方が取られている。これはアニメという媒体の強みを活かした、ならではの手法であろう。

 劇場版『スラムダンク』を鑑賞したときもそう感じだが、スポーツものとアニメの相性はすこぶるいいのかもしれない。これは近年の卓抜した国内アニメーション技術が可能としている領域であろう。