さて、今回の大谷選手と元通訳の水原氏の件に話を戻すと、日米での受け止め方が違うことは先述した通りだ。米国の報道では、水原氏がどうやって大谷選手の知らないうちにその個人資金に手を付けることができたのかが焦点となっている。

 水原氏は当初、「大谷選手に肩代わりしてもらって、大谷選手が450万ドルのお金を自分の口座から振り込んだ」と発言していたが、すぐに全ての証言を否定した。

 もし仮に水原氏の最初の話が事実であるとすると、大谷選手が法律的に、あるいはMLBの規定上、危険にさらされることになる。だから、大谷選手を守るためにストーリーが180度変えられたのではないか――という疑念が米国ではずっと報じられている。

 大谷選手がこの件に関して“真実”を語るかどうかは、分からない。むしろ、弁護士が答えを用意していると考えた方が妥当だろう。もちろん、水原氏が大谷選手の代わりにクレジットカードの支払いまで全てやっていた可能性は否定できない。その場合でも、なぜ大谷選手は不正送金を見抜けなかったのか、本当に把握できなかったのか――。

 FBI(米連邦捜査局)やIRS(米国国税庁)の調査も入っているので、今後このショッキングな事件がどう展開するか、周囲は固唾を呑んで見守るしかない。ただ、大谷選手は自ら声明を出したことで、少なくとも出場停止の事態には追い込まれずに済むのではないだろうか。

 莫大な資産を持つ大谷選手と、仕事上の関係性を超えた“友人”と見なされていた水原氏。二人の関係性が特殊であったからこそ、違法賭博師に付け込まれた、という見方もできる。いずれにせよ、最終的に真相が出てくることはないかもしれない。最後に筆者の、元CIAの友人による箴言(しんげん)を紹介しよう。「こういうケースの場合、真実が語られることは絶対にない」。