直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】初対面の人とも雑談がはずむ1つのオススメPhoto: Adobe Stock

歴史小説離れ

昭和の高度成長期には、社会人の多くが司馬遼太郎池波正太郎の作品を読んでいました。

だから、作品を読んでいるだけで、職場の上司や同僚とのコミュニケーションが円滑になるという側面もありました。

それに比べて、現在は歴史小説の読者が確実に減っています。

雑談力がアップする

小説の話題で雑談が盛り上がるというシチュエーションはめっきり少なくなりました。

しかし、個別の作品の話題で盛り上がれなくても、小説を読んでいれば、それなりに雑談のスキルは上がります。

全国各地の地名大名家食材などの雑学知識が知らず知らずのうちに蓄えられていくからです。

出身地の話題で活きること

ビジネスでは、地方出身者とお会いする機会が多々あります。

私は「どちらの出身ですか?」と尋ねることがよくありますが、「岩手です」という答えが返ってきたら、「岩手といえば盛岡?」と重ねて問います。

たいてい県庁所在地の人口が多いので、これは穏当な聞き方です。小説で得た知識が生かされるのは、ここからです。

地名だけでも会話がはずむ

「盛岡じゃないんです」という答えが返ってきたら、とにかく知っている地名を適当に並べていきます。

「花巻、遠野、釜石、大船渡、奥州、一関……」

一発で当たれば盛り上がりますし、逆に10くらい市名を挙げていくと「よく岩手の地名をご存じですね」といわれます。どっちにしても会話がはずむのです。

苗字から出身地を推測

さらに、「岩手だったら、菊池さんとか及川さんが多いですよね」などというと、「なんでそんなこと知っているんですか⁉」とびっくりされます。

私は苗字から出身地を推測するのも得意です。たとえば、毛利さんとお会いしたら「山口県出身ですか?」と聞きます。長州藩の毛利家に縁があるかもしれないからです。

「うちの毛利は違うんです」と言われたら、次の仮説をぶつけてみます。