新中計で営業利益率6%以上を目指すことについては、前回の中計である「NISSAN NEXT」で掲げた営業利益率5%目標からステップアップしたということだろう。
ただし、全体的に見ると、新中計にはやや物足りない点を感じる。
内田社長は、新中計で「スマートパートナーシップの活用、日産インテリジェント・ファクトリーの拡大、EVはバッテリー生産能力確保、知能化は次世代プロパイロットの実用化、三菱商事とEVモビリティサービス提携活用、ホンダとの新提携活用を急ぐ。これに財務規律の維持を進めていく」と重要ポイントを語った。
だが、内田体制による日産再生への最初のステップが、前回の3カ年中計における2年連続の赤字(19年度、20年度)からの脱却だったと位置づけるなら、次の24年度からの3カ年中計でどこに向かうのか。また、電動車やモビリティサービスなどの分野で仏ルノー・三菱自動車の従来のアライアンスと、発表したばかりのホンダとの新提携をどう具体的に生かしていくのかは、今回の新中期経営計画では不透明なものとなっている。
とはいえ、日産としては、24年間続いたルノーとの資本関係見直し(23年11月にルノー43%出資から相互に15%出資へ)後、初めての再スタートとなる新中計だ。また、新中計は23年度までの「Nissan NEXT」から、もともと掲げていた日産の長期ビジョンである「Nissan Ambition 2030」への「架け橋となるもの」(内田社長)であり、さらに19年末に就任した内田体制としても、任期の想定上“総仕上げ”をかけたものとなる。そうした中で、日産が生き残れるかどうかの分岐点となる、非常に重要な新中計だと受け止められよう。
日産の周囲で動きが激しく
公取委の勧告にホンダとの提携
ここへきて、日産に関する動きがかまびすしい。3月7日に公正取引委員会が日産に下請法違反で再発防止を勧告した。これは、日産が部品取引先下請け企業36社への支払い代金約30億2300万円を不当に減額したとするものだ。日産以外にも、発注代金から「一時金」や「口銭」といった名目で不当に支払金額を減額する事例が目立つとして、公取委は日本自動車工業会にも再発防止を申し入れた。