先斗町歌舞練場ほぼ1世紀前に建てられた先斗町歌舞練場は建築の意匠も見どころいっぱい

気品漂う藤の花が彩る先斗町「鴨川をどり」

 祇園甲部と宮川町は鴨川の東側にありますが、先斗町は鴨川の西側にあります。京阪本線「三条」駅もしくは地下鉄東西線「三条京阪」駅から3分ほど。鴨川に架かる三条大橋を渡ってすぐ、すれ違うと肩が触れそうになるほど細い路地の先斗町通にはお茶屋が軒を連ね、ひときわ京情緒が香ります。

 南北500mにわたるこの一帯が先斗町で、江戸時代のはじめに鴨川の護岸工事を機に町並みが形成されました。1712(正徳2)年に水茶屋ができて以降、花街として賑わいを増していきました。この「ぽんとちょう」という珍しい読み名の由来は、鼓をポンと打つときの音、ポルトガル語で先端を意味する「ポンタ」に由来するなど、諸説が語り継がれています。

 さて、そんな先斗町の歌舞練場で5月1日から24日まで開催されるのが、祇園甲部「都をどり」と一緒に始まった「鴨川をどり」です。1951(昭和26)年から98(平成10)年までは春と秋の年2回公演だったため、上演回数は五花街最多の185回目を今年迎えます。

鴨川をどり2023年に創演150年を迎えた「鴨川をどり」 写真提供:先斗町歌舞会
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 踊りがメインである「都をどり」「京おどり」と異なり、「鴨川をどり」は第一部が舞踊劇、第二部が“踊絵巻”と称される純舞踊となっているのが特徴です。第一部はセリフのあるお芝居で物語を進め、登場人物の心情などを踊りで表現します。第二部は舞妓も加わって華やかな踊りが繰り広げられます。今年の主題は「源氏物語」で、第一部「紫の雲にもゆれば」、第二部「うしろみ月」で構成されています。

 鴨川をどりの座席は、茶付き特別席、特別席、普通席かを選べます。茶席で提供される茶菓子は、先斗町の紋章である千鳥の焼き印を押したまんじゅうで、裏に「鴨川をどり」と筆文字でつづられた小皿は、鴨川の水を想起させる淡いブルー。こちらの小皿も記念に持ち帰ることができます。

 会場となる先斗町歌舞練場は、1927(昭和2)年の建築。当時流行していたアールデコや幾何学模様の窓、スクラッチタイル、かまぼこ状に盛り上がった「なまこ壁」風の壁など、和と洋をミックスしたモダンな建築様式を堪能することができます。

「鴨川をどり」の幕開けと同じ5月1日には、鴨川の西を流れる「みそそぎ川」に高床をしつらえる「鴨川納涼床」も始まるので、爽やかな川風を感じながら、ランチやディナー、ちょっと一杯を楽しむのもいいでしょう。

 今回ご紹介した三つの舞踊公演のチケット購入は、文末の「最新ツアー情報」をご覧ください。舞台の幕開けの高揚感や、地方(じかた)と呼ばれる芸妓の唄、三味線、鼓、笛といった和楽器の音色は、春から初夏にかけての京都の陽気に良く合う心地よさ。京都ならではの音楽フェスとして、気軽に足を運んでみましょう。レンタルショップを利用して和装をすれば、気分も上々ですよ。

鴨川納涼床「鴨川をどり」の行き帰りに楽しみたい鴨川納涼床
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