電話も手紙もなくいきなり封書で
膨大な資料が届くのは困る

 それを考えると、普段うちのクリニックに「先生のセカンドオピニオンを聞きたくて」と受診する患者家族に「本当は保険診療じゃないんですよ」と心の中でつぶやく必要はないのだろう。かかりつけ小児科医は何でも相談屋だから、そういった患者家族のためにぼくらは存在しているのかもしれない。

 ただちょっと言っておきたいのは、この何年かの間にセカンドオピニオンを求めていきなり封書を送りつけてくる家族がいるのだが、それはちょっとどうかと思う。せめて電話をしてからとか、「セカンドオピニオンを受けてくれるか」と手紙で問い合わせをしてからならば分かる。ところがある日何の前触れもなく、レターパックに膨大な資料を詰めてクリニックに送ってくる人がいる。

 当然内容はハードで、小児がんの難治症例や先天性疾患の難しい病気だったりする。いや、それはどうなのかな。自分の子どもが生きるか死ぬかの状態ならば、電話の一本、あるいは手紙の一通も書いて、まずセカンドオピニオンを受けてくれるか聞くものじゃないかな。ぼくが返事しなかったらどうするのだろうか。もちろん謝金を受け取ったことは一度もない。

 うーん、やっぱりこれもぼくの使命みたいなものなのだろうか。で、結局膨大な資料をすべて読み込み、返事を書いてしまう。若干複雑な気持ちが残らないわけではないが、やはり人のために役立てるなら……という思いになる。妻に意見を聞いたら、「それは頼りにされているってことでしょ?頼られるうちが華だよ」と諭された。

 最近は華が去ったのか、セカンドオピニオンの数は年々減っている。特に小児がんに関する問い合わせはほとんどなくなった。今はもう完全に第一線から退いているので、お願いされてもちょっと無理なので、これでよかったと思っている。