もはや日常の言葉となった「味方運」
込められた深いため息

 そしてさらに、よく言われるイライラ要素が「味方運」である。スプラは4対4のチーム戦で、一人ひとりの働きが試合の勝敗を左右する割合が他のシューターゲーに比べて大きい。筆者がたしなんできた過去のFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)は1チーム十数人で、1プレイヤーの存在感は試合の中で薄かった。

 4対4になると、一人ひとりの存在感が濃い。強いプレイヤーも弱いプレイヤーも、その試合で振るわないプレイヤーもみんなが目立つ。自分がどれだけ頑張っても味方1~3人が振るわずに試合に負けることもままあって、こうしたときに「味方運が悪い」と言われる。「自分が相手インクだらけの不自由な中、これだけ活躍したのに勝てないってどういうことだ」という激しい怒りが、味方に向けられる。

 たしかに、味方運に恵まれず負ける試合もあるのだが、「自分は本当に大活躍したけど純粋に味方運だけで負けた」という試合は プレイヤー本人が思っているよりずっと少ない。しかし「味方運で負けた!」と感じたときの理不尽さや怒りは尋常なものでなく、大きいので、あたかも「負けるときはほぼ全試合、味方運のせい」と感じられるのである。

 この味方への憎しみとでもいうべきか、これが際限なく膨らんでいく。興味深いのは、プレイの上手い下手に関係なく、味方を憎む気持ちは生まれるのである。初心者に毛が生えた程度のプレイヤーが自分のことを全力で棚に上げてものすごい勢いで味方を批判している配信も、まあ界隈の闇だが、実際にある。

 筆者個人は、「味方運」という言葉があまり好きではない。対戦するプレイヤーたちは同じくらいの実力で集められているので、上手い下手にそこまで大きな差はない。それに、味方が下手なのではなく相手がうまかっただけかもしれない。

 また、どれだけうまいプレイヤーでも1試合ごとに調子の良い悪いはあって、何をやっても裏目に出てチームの足を引っ張ってしまうことがある。だから味方に来たプレイヤーが振るわないことは珍しくないし、その展開が何戦も連続で続くこともある。こうしたときは「勝利の女神がそっぽを向いている」というべきか、単純に「運が悪い」だけなので、できればあたかも「味方が悪い」というニュアンスのある「味方運が悪い」というフレーズは避けたいところである。

「味方運」という概念自体がプレイヤーのイライラを助長させている向きもあるので、できれば見直されていきたい言葉である。