「インクをたくさん塗った方が勝ち」というテイストのゲームだが、相手チームもインクをたくさん塗ろうとするので、自分の塗りを広げるなら相手チームを排除しなければならず、相手にインクを当ててキルする(倒す)動きが、勝利のために必要になる。すなわち撃ち合い・殺し合いの始まりである。

 なお、初心者ばかりが集まっている部屋では敵を倒す空気は薄く、みんな一生懸命塗り塗りしているだけで平和なものである。上級を目指すほど「殺意」は高まっていく。

スプラ独自のインクシステムと
重層的にいら立ちを生む“デス”

 では具体的に何がイライラするのか。ひとつはスプラ独自のインクシステムにその由来がある。試合は味方と敵で1色ずつ、それぞれの色を塗り合って進行する。自チームのインクがあるところは素早く動くことができるが、相手チームのインクには足を取られて身動きが取れなくなる。

 基本、双方の塗り合いなので、相手インクを浴びながら勝利をもぎ取ろうと不自由に動き回っている体験が、まずプレイヤーにストレスを感じさせる。試合に勝てばそれらの苦労は美談として消化されるが、負けるとただの「不快な体験」として脳が処理し、記憶する。自チームのインク内を試合中ずっと気持ちよく動ける試合もあるが、これは稀である。

 次に、自分への苛立ちである。理想通りにプレイできない自分への苛立ちが、負けるほど妙にネガティブな感情になってプレイヤーを襲う。やがて「おれ/私なんて、どれだけやったって結局うまくなりっこない」と泣きそうになった気持ちを、スプラにある程度のめり込んだことのある人なら、皆味わったことがあるはずである。

 デスしてもイライラメーターは上がる。敵インクを食らって弾けて死ぬ、これがスプラにおける主なデスで、10秒弱で生き返って戦線復帰するが、自分の分身たるキャラがダメージを食らって死ぬストレスは、タンスの角に足の指をぶつけた痛みに向けて感じる怒りに似ている。

 自キャラがデスするのは痛く、その痛みに対する怒り、自キャラをキルしてきた相手プレイヤーへの怒り、その相手プレイヤーに撃ち負けた不甲斐ない自分への怒りなどなど、複合的な怒りを催させるのがデスである。