今期25年3月期の営業利益は3%増の1兆4200億円と2年連続で最高を更新し、営業利益率は7%となる見通しだ。「26年3月期(25年度)に目指してきた7%以上を25年3月期(24年度)に1年前倒しで達成する。事業体質は着実に改善している」と、三部社長は評価する。けん引するのは北米のハイブリッド車販売で、懸念は中国市場の変調による販売不振だが、こちらは立て直しを進めている。

 この24年3月期決算発表会見では、ちょっとした注目点もあった。決算会見の場に、三部社長が初めてホンダトップとして出席したのだ。

 これまでホンダは、決算会見に社長は出席せず、会長あるいは副社長、CFOが行うのが慣例だった。しかし、「トップが経営収益を直接発信することは重要。今回、売上高利益率7%を1年前倒しで達成したいという意思表示をしたかった」「リーダーシップを発揮し、本決算には必ず出席することにした」と、三部社長は出席の理由をあえて表明した。

 ホンダは、本田宗一郎氏と藤沢武夫氏の技術屋と事務屋のコンビ創業者以来、本田技術研究所出身の社長が内政を仕切るが、営業・財務畑の副社長か会長が決算会見や自工会など業界活動を行うというすみ分けをしていた。しかし、三部体制が3年も経過する中で、会長も空席とし三部社長が前面に出てくる機会が増えている。ここでも、旧来のホンダトップの慣行からの決別がうかがい知れる。

 三部社長といえば、21年4月の就任会見で「40年までに新車をEVとFCVで100%にする」と宣言し、大きな話題を呼んだ。当時のホンダは、グローバル拡大戦略からの修正に追われた前任の八郷隆弘前社長の後を継いだところで、世界生産体制の縮小や四輪事業の収益性悪化の中で、モビリティ革新が進む厳しい経営環境にあった。

 それでも「逆境にこそ強いタイプ」と自らを評して、あえて社内外に「エンジン車ゼロ宣言」を行ったのだ。