再編が進まないと逆に物流機能が弱まるリスク
今後、世界各地で物流の重要性は一段と上昇するだろう。米中対立や中東情勢の緊迫化などで、サプライチェーンのリスク分散が加速するはずだ。企業が持続的に事業を行うためには、物流機能の強化を避けて通ることはできない。
国内では、人口減少、少子高齢化が加速する。過疎化が深刻な地方では大手の小売店が相次いで撤退し、日常生活上の不便も増えている。地方においても、ネット通販が果たす役割は増すだろう。そのためにも物流体制の維持・強化が、私たちの日常生活により重要になる。
そうした環境変化を念頭に、物流大手は国内外の企業と連携を強化するはずだ。大手企業による、物流拠点やシステムの共同開発・共同運営は増加するだろう。システム統合などを機に、経営統合を目指す企業も増えると考えられる。中長期的に、わが国の物流大手の合従連衡は加速し、いくつかの「メガ物流企業」へ集約が進むと予想される。
中小物流業者の再編も加速するはずだ。経営者の高齢化、後継ぎ人材の不足など、事業譲渡(身売り)を目指す中小・零細の企業はさらに増えそうだ。破綻先も含めて買収を重ね、特定の地域に密着したトラック運送体制を強化するなど、粘り強く収益の獲得を目指す、生き残りを懸けた競争が激化するだろう。
グローバルに事業を展開するメガ物流企業も、地域密着型の中小物流事業者も、再編により企業の数は集約され、業界全体で労働生産性は高まるだろう。
逆に、再編が進まないと人手不足などで事業運営が困難になる企業は増え、わが国の物流機能は弱まるリスクがある。それは、経済全体に甚大なマイナス影響を与える。2024年問題を契機に、業界再編は加速し、淘汰(とうた)される企業も増えるだろうが、中長期的な物流体制の強化と効率性上昇には必要不可欠だ。