「同意なき買収」劇に大手・佐川急便も!

 日本郵便とセイノーが提携した背景には、2024年問題の他に、世界市場における物流の競争激化に対応する意図がある。物流業界の再編が動き始めたのである。

 物流分野での買収案件も増えている。かつて日立系の物流企業だったロジスティード(現在は米投資ファンド傘下)は、アルプス物流(アルプスアルパイン系列)に対する株式公開買い付け(TOB)を発表した。8月中旬頃のTOB開始を予定し、成立後は、ロジスティードはアルプス物流を非公開化し、収益力の底上げにつなげようとしている。

 電子部品の大手メーカーであるアルプスアルパインは、構造改革を強化している。25年3月期、アルプス物流の売却などにより、同社の連結最終損益は300億円の黒字に転換する見通しだ。前期は298億円の赤字だった。構造改革の一環で物流子会社の売却を目指す企業は増え、物流企業が取得するケースは増えるだろう。

 物流業界では、「同意なき買収提案」も起きている。AZ-COM丸和ホールディングスによる、C&FロジホールディングスへのTOBだ。丸和はAmazonの主力配送業者の1社。ネット通販の増加で、低温輸送能力の強化が急務となっている中、合意取り付けに時間をかけずに買収を仕掛け、物流体制を迅速に強化する考えが強いのだろう。Amazonの物流革命がいかにスピーディーかを象徴する事例ともいえる。

「TOB合戦」に大手・佐川急便も参入!物流業界の「再編」が日本経済に不可欠なワケPhoto:123RF

 ただし、5月17日、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスが、C&Fロジの買収に乗り出す、と一部で報道された。C&Fロジは「候補者にSGが含まれていることは事実」とするコメントを発表。今後、TOB合戦に発展し、「買い付け価格が引き上がるかもしれない」という市場関係者の指摘も出ている。

 他方、トラック運送事業者の99%を占めるといわれる、中小・零細の運送業者の事業環境は、非常に厳しい。人手不足や離職者を防ぐための賃上げ、中東情勢の緊迫化と円安による燃料コスト上昇などで倒産は増加傾向にある。

 生き残りを懸け、地域に密着した事業戦略を強化する中小企業は多い。また、雇用維持と事業継続の両面から、事業譲渡を目指す同業者を吸収するケースが増えている。

 中小の運送業者間では、2024年問題により事業継続が難しくなった同業者を吸収して、運送体制の強化につなげる企業もある。多い日に10件もの買収案件が持ち込まれる地方の物流企業経営者もいると聞く。