日本郵便とセイノー業務提携の狙いとは

 物流の問題が注目されたきっかけは、1990年代以降、米国を中心に世界で加速しているデジタル化といえる。インターネットの出現で、国境をまたいだモノやヒトの移動は加速し、グローバル企業はジャスト・イン・タイムの供給体制を強化した。情報通信技術を積極的に活用することで、在庫の確保、積み増しにかかるコストを徹底して削減した。

「TOB合戦」に大手・佐川急便も参入!物流業界の「再編」が日本経済に不可欠なワケPhoto:PIXTA

 2000年代、米Amazonドットコムや中国のアリババ集団など、有力プラットフォーマーがネット通販事業を強化した。いつでも、どこでも、需要者は必要なモノの入手が可能になった。特に、アマゾンは陸海空の物流網を強化し、世界中から最終目的地にまで商品を迅速に届ける体制を構築した。

 こうして、主要物流拠点から消費者がいる場所までの、いわゆるラスト・ワン・マイルをつなぐ物量の重要性が高まった。他社に先駆けて物流を強化し、顧客との関係を強化できるか否かが、企業の中長期的な業績に大きく影響する――「物流を制する者が世界を制する」という考えを、国内外の主要企業がより重視するようになった。

 そうした状況下、わが国の物流業界は2024年問題に直面した。トラック運転手の残業規制で、モノを運ぶコストは増えた。鉄道や船舶による代替輸送を行う企業もあるが、荷物の増加に対応するのは簡単ではない。人手不足からトラック運転手の確保も難しい。

 物流大手は提携を強化し、問題を解決しようとしている。代表例は、日本郵便グループとセイノーグループの業務提携だ。両社は、よりオープンな形でトラック輸送事業を運営し、収益性を高めていくという。物流拠点の共同運営を進め、他社にも利用を呼び掛ける方針のようだ。物流はよりオープンな形に変化し始めた。