お客様から「上の人を出せ!」と言われたとき、「感じのいい上司」はどう対応する?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。

お客様から「上の人を出せ!」と言われたとき、「感じのいい上司」はどう対応する?Photo: Adobe Stock

「上を出せ!」と言われたとき

 私は企業の研修講師として、クレーム対応も教えています。
 この頃、ご依頼が増えてきているのが「クレームの責任者対応」です。

 お客様から「上の人を出せ!」と言われ、「上司です」と名乗り出るのには、勇気がいりますよね。
 新任の管理職の方にとっては、なおのことでしょう。

 今日は、私自身が責任者対応をしてきた経験に加え、これまで出会ってきた、責任者対応の達人のノウハウを2つ厳選してお伝えします。

1「事実」について

 1つめは、対応を代わる際、部下からは「事実」だけを聞いてください

 部下からの報告には「感情」が含まれることがあります。
 実際に私も、「勘違いされているお客様みたいなんですが」と報告を受けて、対応を代わったことがありますが、話を伺ううち、特に勘違いなどされていなかったことがありました。「勘違いしている」という先入観を持ちながら対応したために、思いのほか、収束までに時間がかかってしまいました。

「~みたいなんです」「~だと思うんですけど」「おそらく」などの言葉が出てきたら、それらは話し手の感想。
 そう感じた「事実」、例えば「何が起きたのか」「お客様が何と言っていたのか」を聞くようにしましょう。

2「責任」について

 2つめは、最初の名乗りかたです。
 まずは「責任ある人物が出てきたこと」を印象づけるのです。

 初頭効果といって、人は、最初に与えられた情報が、その後最も残ると言われています。
 いつもより少し声を低めに、ゆっくりめに、話し始めます。そして、

「〇〇さま、たいへんお待たせいたしました。※※部責任者の、△△と申します。」

 知っているならば、相手の名前を呼びかけ、続いて自分の肩書と名前を手短に伝えます。
 手短というのが重要で、「責任者の方、やらせていただいておりまして…」や「いちおう、責任者という形をとっておりまして…」など、不要な言葉を使った長い名乗りでは、「つたない」という印象を持たれてしまいます。

 その後、

「このたびは~~につきまして、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ぜひ、私にお話を伺わせていただけませんでしょうか」

 と続けます。
 たったこれだけで、「用件が伝わっている」「丁寧に詫びている」「積極的な対応姿勢がある」の3点が相手に伝わります。
 責任ある人が対応してくれている、という、そもそもの要望がかなっている瞬間です。

 クレームは、申し立てる方も大きなストレスを抱えています。
 そのストレスから一早く解放させるために、最初にできる気づかいをご紹介しました。ぜひ、試してみてくださいね。

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。