ダメなリーダーは「社員は家族だ」と言うが、いいリーダーは何と言う??
そう語るのは、これまで4300社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)

ダメなリーダーは「社員は家族だ」と言うが、いいリーダーは何と言う?Photo: Adobe Stock

「社員は家族」か?

 社長の仕事は、孤独だと言われます。
 私自身、孤独を感じています。

 ある取材をされたとき、「社員は家族ではないのですか?」と聞かれたので、「社員は機能です」と答えたらドン引きされたことがありました。
 しかし、本当にそうです。「家族ではありません」よね?

 私にとっての家族というのは、奥さんであり、子どもたちであり、両親のことです。
 社員は家族ではない。

 なぜ、そんな当然のことが、おかしいことのように扱われるのかが不思議です。

 ピラミッド組織では、立場が上にあがればあがるほど、孤独になります。
 最初にリーダーになるタイミングでは、その孤独を引き受けられず、つい仲良くすることを優先させてしまいます

 これは、ある部長の話です。
 前任の部長から業務の引き継ぎが少なかったことで、部下からいろいろと教えてもらう立場からスタートしました。
 すると、つねに部下が部長に対して教えてあげるという感覚が抜けなくなり、上司の指示を聞かなくなってしまいました。
 緊張感がなくなり、ナメられてしまったのです

 そんな、なあなあの関係をやめるために、部長は部下と距離をとるようにしました。
 すると、コミュニケーションが減り、「最初は寂しく感じた」と言います。

「寂しい」という感情を引き受けることが、リーダーの立場では必要です
 その後、業務スピードが向上したことで、その部長は寂しさを気にしなくなっていきました。

学校ではなく「塾」

 さて、こうした「寂しさ」を感じる原因はなんでしょうか。
 それは、「学生気分」にあると思います。

 多くの人は、高校や大学を卒業して、就職活動をして、いまの会社に勤めていることでしょう。
 つまり、学校生活の延長線上に会社生活があるのです。

 入社1年目や新人の頃は、同期も横並びで学生気分で乗り切れたでしょう。
 うるさい上司は学校の先生のように見え、同期同士でグチを言ってガス抜きをしてきたかもしれません。

 しかし、いざあなたが責任のある立場を任されると、一気に学生気分ではやっていけなくなります。
 そこで感じるのが、先ほどの「寂しさ」です

 ここで考えてほしいのは、学校ではなく学習塾です。
 楽しい学校の先生と、厳しい塾の先生をイメージしてください。
 楽しいけれど緊張感がなくて、志望校に落ちるのか。厳しいけれど緊張感に溢れ、志望校に受かるのか。

 その2つを選べると思ってみてください。
 私の考えでは、会社は厳しい塾に近いです
「最近、部下から食事や飲みに誘われなくなったな」と感じるなら、それはあなたが優れたリーダーになったサインです。私自身も、社員とは飲みに行きません。

 ちなみに、他の会社の社長同士で会食することはあります。
 同じ立場で同じ景色についての話ができるからです。
 リーダーになったなら、そういう「切り替え」も必要でしょう
 みなさんには、寂しさから逃げて楽しい学校生活にするのではなく、厳しくても結果を出すリーダーの仮面をかぶってもらいたいのです

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。