シンプルなインテリアも気持ちいい。空間設計は巧み。乗り降りしやすく、シートに収まると実にしっくりくる。視界は良好で、このクラスにありがちなドアミラー回りの死角は小さい。運転姿勢を決めるとボンネットが見え、車両感覚を把握しやすいのもうれしい。ラゲッジスペースは余裕たっぷり。荷室容量は後席を立てた状態で458L。この車格でこんなに広いスペースを実現したクルマはちょっと心当たりがない。フロアは低く、天地方向も広い。実に使いやすそうだ。

 メーターや操作系なども凝ったところはなく使いやすい。“シンプルisビューティフル”の見本のような感覚である。WR-Vをあれこれ観察して、初代~2代目のCR-Vを思い出した。手ごろなサイズで使い倒せる、あの雰囲気である。上質さを追求したヴェゼルやZR-Vとは別種の、プレーンで親しみが湧く雰囲気に共感を抱くユーザーは、多いのではないだろうか。

素直で気持ちのいい走り味
エンジンサウンドもグッド!

 走りも素直で扱いやすい。パワートレーンもハンドリングも、どこにもカドがなくストレスなく気持ちよく乗れる。

 118ps/142Nmを発揮する1.5L・i-VTECエンジンは、4気筒であることがうれしい。ドライブバイワイヤと協調制御してリニアな加速フィールを実現したCVTは、加速時や減速時にステップシフト制御を採用したのが特徴だ。素直な出力特性は扱いやすい。発進時に若干の飛び出し感があるが、車速が乗れば気にならない。

 性能的に特筆する点はないが、パフォーマンスは十分以上。街乗りから高速クルージングまで満足できる。基本的に静粛性が高いのもプラスポイントである。

 WR-Vは静かであると同時に、何より音がいい。右足を踏み込むと2000rpm台の半ばから、意外に勇ましいエンジン音が耳に入ってくる。開発陣に聞くと、意図的に聞かせているらしく、インドなどでは“ホンダサウンド”として好評だという。この音が3気筒特有のビートだったらあまり歓迎できなかっただろう。このクラスは3気筒が多いが、やはり4気筒はいいものだとあらためて見直した。

 足回りの完成度もなかなかだ。「新興国ではショーファードリブンで使われる場合も多いので、乗り心地には気を配った」というエンジニアの言葉どおり、荒れた路面での乗り心地にも配慮されてチューニングされたことがうかがえた。

 乗り味は、軽快なのに落ち着いていて、ボディの高い剛性感が印象的。しかも、意のままに操れるハンドリングのこだわりもうかがえた。強い個性こそないが、クセがなく動きが自然で実に乗りやすい。