その数日後にカイロ大学総長の署名入り声明が、駐日エジプト大使館のFacebookに掲載される。その早さに驚いた小島氏はその後、声明文の文案を書いたのが、小池氏のブレーンの一人だったジャーナリストA氏だと知るに至った、という顛末だ。

 小池氏が学歴詐称をしたという確定的な証拠はいまだない。しかし小島氏の告発は、2020年に報道がトーンダウンしたきっかけであるエジプト大使館Facebookの声明文が、小池氏の疑惑を払拭するものにはならないと思わせるに十分な証言である。

 小島氏は、今回の都知事選で小池氏が再び経歴に「カイロ大卒業」を明記するかに注目している。2020年やそれ以前については、公職選挙法(虚偽事項公表罪)の公訴時効である3年が過ぎてしまっているが、今回小池氏がそれを書けば、刑事告訴することが可能だからだ。

問われる小池氏の手腕
世論の反応は鈍いが油断は禁物

 当時の同居人や知人が糾弾し続け、かつての側近も反旗を翻した。しかし、次から次へと証言が出続ける「学歴詐称疑惑」について、世論の反応はいまいち鈍い。

 「疑惑の段階だからわからない」というよりも、情報が氾濫する現代においてどの程度濃厚な疑惑なのか、その内容を把握しきれていない人も多いのだろう。

 また、一時期は「既得権益を貪る自民党のおじさん議員」との対決姿勢を打ち出していた小池氏のイメージがいまだ強く、「おじさんに盾ついたから疑惑を持ち出されていじめられている」と思っている層や、「候補者選びの争点はそこにない」と考える層もいるのかもしれない。

 しかし、小島氏の告発記事から読み取れるのは、学歴詐称疑惑への追及に都議会自民党が加わることを懸念した小池氏が、自民党に強く出ることができなくなり、次第にすり寄っていった姿である。学歴詐称疑惑に小池氏がどのように対応するかは、小池氏が再選した際の政治手腕を占うものと言える。

 2020年はFacebookの声明文で乗り切った小池氏。今回はどのような手でこれを乗り切ろうと動くのか。都民ならずとも注目したい点である。