裁判員裁判による一審判決を覆した
「前例踏襲」「量刑の相場感」に批判も

 では、明日の控訴審判決の行方はどうなるのだろうか。

 一審判決では家令和典裁判長が「苦しい評議でした」「慎重に、本当に慎重に検討しました」と言及し、異例の死刑回避につながった経緯を明らかにした。しかしながら「3人の生命が失われたという結果が重要である」とも指摘しており、一審判決が維持されるかどうかは不透明だ。なぜなら、プロ判事は過去の判例を重視して判断するからだ。

 一方で、弁護側は「(一審判決を破棄すれば)裁判員制度の否定となる」と訴えており、判事は悩ましい決断を迫られることになる。

 というのは冒頭に紹介した通り、一審の裁判員裁判で死刑が言い渡されたのに控訴審で破棄され、無期懲役が確定した事件が下記の8例ある。

(1)「松戸女子大生殺人放火事件」(09年10月に発生)
(2)「南青山強盗殺人事件」(09年11月)
(3)「長野一家3人強盗殺人事件」(10年3月)
(4)「大阪ミナミ通り魔殺人事件」(12年6月)
(5)「神戸小1女児殺人事件」(14年9月)
(6)「洲本5人殺人事件」(15年3月)
(7)「熊谷6人殺人事件」(15年9月)
(8)「福島2人ひき逃げ殺人事件」(20年5月)

 いずれも凶悪事件の前科があったり、3人以上を殺害したなどの理由で一審は死刑を言い渡し、高裁が破棄していた。裁判員らはいずれも記者会見で、死刑判決を出すに当たっての苦悩を口にしていた。だが、高裁が「前例踏襲」「量刑の相場感」などから一審判決を破棄したことで、裁判員制度は意味がないのではないか、などの批判もささやかれていた。

 高裁が今回も「前例踏襲」「量刑の相場感」を重視するなら、極刑が言い渡される可能性が高い。