被告の「反省」について
懐疑的な見方も
一審判決は「反省しており、更生の可能性が認められる」と指摘したが、実は「反省」には懐疑的な見方もある。
被告は逮捕直後、入院患者20人前後の点滴バッグに消毒薬を混入したと供述。当時の大口病院では、寝たきりや一般家庭での介護が難しい高齢者、末期がんなど終末期の緩和治療が行われており、自然死を装って犯行に及んだとみられていた。
しかし、いずれも病死と判断されて火葬されていたため、血液などの証拠は残っておらず、立件されたのは3人だけだった。もちろん、刑事訴訟法の原則では、いくら供述があろうとも、証拠がなければ起訴は難しい。
検察側は一審の被告人質問で「起訴された事件の前に消毒液を入れたことはありましたか」と尋ねた。検察側が起訴内容以外の“犯行”について質問するのは異例で、家令裁判長は「任意で答えるのであれば」と許可したが、被告は「お話したくありません」と拒否した。
筆者と長い付き合いの弁護士はこの点について「本当に反省しているなら、真実を包み隠さずすべて語るはずだ」と指摘。「裁判員はだまされたかもしれないが、プロはその辺をきちんと見る。被告がしていたのは反省ではなく、犯行がバレたことに対する後悔だろう」と皮肉った。
日本の裁判は三審制で、判決に不服があれば控訴・上告が認められている。しかし実際には、控訴審判決に審理の違法性などがなければ、最高裁は弁論を開かずそのまま踏襲する。つまり、実質的に19日の控訴審判決が被告の運命を決めることになる。
三浦透裁判長の判断が注目される。