IT・通信、総合商社、ロボット製造…
多種多様な企業の協働が重要だ
日食協の会員企業には、国内の通信大手企業と組み、物流のマッチングに取り組む総合商社もある。物流マッチングとは、空きスペースのあるトラックを見つけ、異なる企業の荷物を混載して運ぶことをいう。物流大手やコンビニ企業も、トラックの共同運送をするなど、自前ではなく、複数の企業と物流面での協業体制の強化を急いでいる。
今や、個々の企業は商慣習に固執する余裕はないといっても過言ではない。物流分野では、事業運営に行き詰まった中小の事業者を吸収したり、TOB(同意なき買収)を仕掛けたりするケースも増えている。
今回の食品8社のデータ連携は、そうした物流業界の変革を加速することになるだろう。食品の輸送は鮮度維持、輸送時の温度管理などこまやかな配慮を必要とする。大型倉庫の稼働率を上げるために、パレットの共通化、米EC大手アマゾン・ドット・コムなどが開発を強化するロボットなどの省人化技術の開発強化と実用の必要性も高まる。
食品大手企業は目下、管理システムの構築に取り組む。その中で、物流の効率性を高めるため、センサー技術の活用、AIを使い効率的な輸送手段と経路の策定が進む可能性は高い。小売店舗と物流拠点の一体運営など、食品関連分野の業態が変化することも考えられる。
そうしたビジネスモデルの変革は、食品企業だけでは難しい。物流、IT・通信、総合商社、ロボット製造などの機械メーカーなど、多種多様な企業の協働が重要だ。機械と異なり、食品は消費期限がある。限られた時間で、より良い品質の物を最終目的地に届けるサプライチェーン(供給網)の構築は、他の分野での応用可能性も高いはずだ。
当面、2024年問題による中小の輸送事業者の破綻は増加する恐れが高い。規制強化による経済運営のマイナスを解消するために、今回の物流連携を嚆矢(こうし)に、国内のより多くの企業が共同物流体制やデータの連携を強化することが必要だ。