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「伝票主義」が長時間労働の一因!
非効率な商慣習からの改革を急げ

 従来、わが国の物流分野では、「伝票」が重要な役割を果たした。伝票に記載された内容を基に荷物を受け取る。届け先で、目視で納品情報を確認する。それが当たり前だった。伝票主義の商慣習は、トラックドライバーの長時間労働の一因との指摘は多かった。

 国土交通省の検討会の資料を読むと、大手食品メーカーの物流業務の詳細を確認することができる。荷積み時と荷下ろし時の検品は、紙に印字された内容との照合を目視で行う。伝票に記載された荷物の積み込み、荷下ろし、その他の付帯作業もトラックドライバーが行ってきた。

 荷下ろし時の長時間待機も常態化した。本来30分で終了する荷下ろし作業のために、7時間待機し、作業終了後の受領書を受け取るために2時間程度待つケースもあったようだ。その他にもドライバーがすべき作業は多い。出荷時の荷物の仕分け、賞味期限の確認、納品先でのパレット(荷物を載せる薄い板状の台)の積み替えや品物の格納、フォークリフトの運転などだ。

 食品業界では、トラックの配送手配を、輸送を行う前日に、“見込み”に基づいて行うことが多かった。発注側の企業は、協業する輸送業者の「深夜業務を前提にしている」との指摘もあった。つまり、伝票以外の商慣習にも課題が多いのだ。

 人手不足によるドライバーの減少で、そうした商慣習を続けることは難しくなっている。コロナ禍以前から、負担に耐えられなくなり、加工食品分野の運送事業から撤退する事業者は増えていた。検品や付帯作業の軽減のため、追加料金を求める事業者もあった。

 そうしてついに2024年問題に突入したことで、伝票に基づいた物流を続けることがいよいよ困難になっている。米国では、原則としてドライバーの荷待ち時間や提供する役務の内容は契約に基づく。日本でも商習慣を見直し、伝票のデジタル化、トラックの空き状況や配送拠点のデータ共有による効率性重視へ、より持続可能な物流の体制を目指すようになった。

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