「お客様に興味を持ってもらうために、持ち物にこだわっています」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元トップ営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、身につけた営業スキルをすべて捨て、リッツ・カールトンで磨いた目の前の人の記憶に残る技術を実践したことで、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位になりました。
その福島さんの初の著書が記憶に残る人になるです。ガツガツせずに信頼を得る方法が満載で、「人と向き合うすべての仕事に役立つ!」「とても共感した!」「営業が苦手な人に読んでもらいたい!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、名刺入れとペンに込めた「こだわり」を紹介します。

コミュ障、高卒、成績最下位の営業マンが「わずか1年」で表彰台に立つために実践した“持ち物へのこだわり”とは?Photo: Adobe Stock

名刺入れを見たお客様に言われた「ひと言」

 新人営業の頃、僕はとくに理由もなくモンブラン社のシンプルな名刺入れを使っていました。すると50代くらいのお客様から、こんなことを言われました。

「モンブランのシンプルな名刺入れですね! とても信頼感が伝わります」

 そうか、営業は愛用する小物でも値踏みされてしまうのか。驚くとともに、逆に自分を表現できるツールにもなると気づきました。

 それ以来、僕はほぼすべての持ち物に「自分なりの意味」を持たせています。

すべての持ち物に「意味」を込めた

 たとえば、今使っている名刺入れはトカゲの革からつくられています。
 トカゲのしっぽは切れてもまた生えてきます。名刺交換をした人と「切っても切れないご縁になりますように」という意味を込めて、この素材を選びました。

 名刺入れについて質問してくれるのは30人に1人くらいですが、質問を受けた際にそう答えると、「そこまで考えてるんですね……」と驚いていただけます。

 他にも、以前は「ウォーターマン」というブランドのペンを使っていました。書き心地がよく、値段もお手ごろだったからですが、調べると、じつはウォーターマンの創業者は営業だったとわかりました。
「契約時にインクが滲まないペンをつくりたい!」と、思い立ったそうです。その事実を知ってから、僕はお客様にこう伝えていました。

「このペンは、“インクは滲むもの”という当たり前に疑問を持った人がつくったペンです。僕もそんな営業でありたいと思って使っています」

「意味」が、自分に興味を持ってもらうきっかけになる

 なぜ、モノに意味を込めることが重要なのでしょう。
 それは意味を通して、自分という存在に興味を持ってもらえるからです。

 商品やサービスを説明する前に、まずは「人」として興味を持ってもらう必要があります。
 でも、「誠実であることを心がけています!」なんて聞いてもいないのに話し始めたら、うざいですよね。人は自分が関心のあることだけを聞きたいと思うもの。興味のないことを説明されても、鬱陶しく感じるだけです。

 そこで、モノに自分なりの意味を込めて表現するのです。そうすることで、相手はつい「なぜ?」と質問してしまいます。

「変わった名刺入れですね」
「ありがとうございます。こちら、トカゲの皮でできているんです」
「そうなんですね。なぜ、それを選んだんですか?」
「なぜなら、トカゲのしっぽが切ってもまた生えてくるように、お客様と切っても切れないご縁をつくりたいと考えているからです」

 これなら押し付けがましくないですし、「誠実であることを心がけています!」と言われるよりも、よっぽど「誠実そうな人だ」と感じるのではないでしょうか。
 そして意外な意味を知ったお客様は、誰かに話したくなります。

「聞いてよ。変わった名刺入れを持ってる面白い営業がいてさ~」

 こうして口コミが生まれ、紹介にもつながっていきました。

(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。