2024年は重要な年だ。全4種類のラインアップが揃う。DB12とDBX、今回の主役である新型ヴァンテージ、そしてまだ見ぬフラッグシップモデルである。

 先日、新開発V12ツインターボユニットが発表された。そう、アストンマーティンはV12を諦めなかったのだ。今年後半にデビューするDBS後継車(順番からいうとヴァンキッシュと名乗るか?)に搭載される。新型ヴァンテージはDBXと並ぶ販売の主力モデルである。それゆえ、新たな戦略の成否の鍵を握る。実力=進化の度合いをスペインはセビリアで開催された国際試乗会で存分に体感してきた。

ドライバーとの一体感を大切にしたV8ツインターボ
サーキットを含めポテンシャルは強力無比

 ヴァンテージのリファイン手法はDB11→DB12と同様だ。フロントマスクとインテリアを大胆に変更し、パワートレーンとシャシーの性能を大幅に引き上げた。DB12はGT寄りのスーパーツアラーを目指したが、ヴァンテージはドライバーとの一体感を高めたスーパースポーツを志向する。

 パワートレーンは基本的にDB12のリファイン版。メルセデスAMG製4L・V8ツインターボはモデル特性に合わせてチューニングされ、最高出力665ps/最大トルク800Nmと従来から大幅アップした。組み合わされる8ATは変速時間を速めるなどスポーツカーらしさの演出にこだわっている。ボディやシャシーの進化も見逃せない。ボディ剛性の強化とトレッド拡大、新たなEデフの採用、最新のシャシー制御など多岐にわたる。

 セビリア郊外のサーキットで実物と初めて対面した。先代モデルに比べて40%近く面積を広げた凸グリルと新たなマスク、30mmも広げられたボディによって、限定モデルOne-77の弟分のように見える。グリーンやオレンジといったド派手なカラーはもちろん、日本人オーナーが好むシルバーでも見た目のインパクトは強力である。

 乗り込めば、うってかわってラグジュアリーな雰囲気だ。DB12とおなじ機能配置となり、物理スイッチを可能な限り残しつつもモダンに仕上げるという気遣いがうれしい。着座位置も下がった。アストンマーティンならではの世界を走り出す前から実感する。

 まずはポルトガルの国境に近い山間部を走り回る。従来モデルにあった野生味は完全にその気配を消した。インテリアの見栄え質感とライドコンフォートがそう思わせるのだ。デフォルトのドライブモードはスポーツ。明らかにボディは強くなり、シャシーもしなやかによく踏ん張る。コーナリングの軌跡がつねに思いどおりのラインを描く。曲がりやすさ、とくにアクセルオフでのノーズの向きの変化が自然で楽しい。