日立製作所や東芝、三菱電機はデジタル事業を成長分野に位置付けているが、想定したほどには事業規模を拡大できていない。実は日系企業には、欧米や中国の企業と比べて、DX事業で実績を上げにくく不利な戦いを強いられる特別な事情がある。地政学リスクや経済安全保障の意識の高まりにより、母国の社会インフラにおいてデジタル化の実績をつくることの重要性は増すばかり。特集『日立 最強グループの真贋』の#11では、日系DX企業のハンディキャップの「深層」に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
中西日立前会長が語っていた
インフラ企業の“重大問題”
新型コロナウイルス対策の給付金を国民に配るためのシステムの不備により、日本政府のIT活用のレベルの低さが露呈した──。政府自身が「デジタル敗戦」と認めざるを得なくなったのは記憶に新しい。
実は日本では、政府に負けず劣らず、東京電力をはじめとしたインフラ企業のデジタル化も出遅れている。そうした“顧客”のデジタル音痴ぶりが、日立製作所や東芝の思わぬハンディキャップになってしまう公算が大きくなっているのだ。
そのリスクの元凶は、電力会社などのインフラ企業が何でも自社でやろうとする自前主義だ。例えば、電力需給データを日立などのDX(デジタルトランスフォーメーション)企業に解析を委託すれば劇的に生産性が改善するのに、その業務を自社内に抱え込んでしまうのだ。
生前の中西宏明・日立製作所前会長も、この“重大問題”の本質について語っていた(2019年に、当時の日本経済団体連合会会長として受けたダイヤモンド編集部のインタビューで)。