「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIA 広告事業部・サブマネージャーである黒澤辰哉氏。Yahoo・Google・LINE・Facebook・Instagram・X等のプラットフォームでの広告運用を得意としており、本書でもたびたび登場するFIDIA役員 菅良平氏の部下でもある。そんな黒澤氏は、『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回は「目安箱」に関する印象的なエピソードを伺った。(ダイヤモンド社書籍編集局)
目安箱がダメな理由
――歴史ある企業では「若い人の意見は貴重」と意見を集めたのに、その後なしのつぶてになることが多いと聞きます。
せっかく目安箱で意見を集めたのに、どうしてそのような結果になってしまうのでしょうか。
黒澤辰哉(以下、黒澤):目安箱は一見よい仕組みに見えますが、実は愚痴の温床になってしまうところがあるんです。
その結果、「せっかく一生懸命意見を考え、勇気を出して提案したのに」と若手の不満が溜まることにもつながってしまうんですよね。
最近はよく「風通しがいい会社」という話を聞きます。
実は「風通しのよさ」と「なんでも言っていい」は全然違うもの。
個人の権利や主義・主張はあると思いますが、なんでも言えばいいというわけではない。
その中でも会社にとって有益なことや必要なことを言える環境づくりが必要ですね。
――FIDIA役員である菅さんにも、先日同じような話を伺いました。
その中でも印象的だったのが、夜はお酒の場にあまり行かないようにしているという話でした。
黒澤:そうですね。お昼は一緒に食べにいきますが、夜はあまり一緒に行かないことが多いです。
というのも、飲みの場は愚痴の温床になりやすい。
会社をよくする意見というより、悪いところを指摘する声が集まってしまう。愚痴を言い合うことで全体の士気が下がり、クレーマーを量産することにもつながってしまいます。
ですから、全員の意見、特に感情面については汲み上げすぎないように心がけています。
建設的な意見を交わす環境づくりを
――愚痴の温床をなくす取り組みというところですね。
難しいところですが、何か工夫などされている点はありますか。
黒澤:ひとつ面白いエピソードがあります。以前、めちゃくちゃ仕事ができる人が電車で遠いところから通勤していたんです。その人が、もっと会社にコミットしたいので、家を会社の近くにしたいと相談があったんです。「支給されている交通費をそのまま家賃補助に回してもらえれば、もっと仕事に打ち込む時間を伸ばすことができる」と。
当時それに関する特別な制度はなかったのですが、今の支給している交通費と変わらない支給額に対して、当人が仕事に打ち込める環境をつくれるということは、会社にとっても本人にとってもメリットがあるんですよね。そういった前向きな相談や意見は、どんどん言える環境をつくりたいと思っています。「風通しがいい」というのは、なんでも言っていいということではなく、会社にとって有益な意見を言える環境のことなんですよね。
悪口や愚痴を言うこと自体は簡単ですが、何の生産性もありません。
そこで、FIDIAでは「悪口や陰口は世界一生産性がない行為だからやめよう」という風土を浸透させています。元々僕らは「ワクワクする友達と、ワクワクする事業で、ワクワクする世界を。」というミッションのもとに仕事をしています。
その原点に立ち返ることを社員にも問いかけたんですね。
そのために誕生したのが、本書にもある「全社員ヒアリング制度」です。
一人15分ほどで「事業はどうしたらよくなるのか」「どうしたら成長できるか」を互いにディスカッションします。この15分は好きなことを言っていいのですが、愚痴を言う場にならないよう、「会社や個人にとってよくなることだけ」を提案するルールとなっています。ポイントは、提案に対し「役員が必ず回答する」「できない場合は明確な理由を伝える」こと。実行できない場合にはその理由を伝え、納得してもらうよう工夫をすることが大切ですね。