エヌビディアの時価総額が世界トップに
GPUの強みと課題は?

 エヌビディアは業績が急拡大したことで、株価も上昇した。約10年前から米株式市場の時価総額トップクラスにはアップル、グーグル(アルファベット)が顔を並べるが、彼らと比較してもエヌビディアの株価上昇ペースは急速である。2023年5月に時価総額が1兆ドルに達すると、24年2月に2兆ドルを突破。そして24年6月5日、ついに3兆ドルを超えてアップルを上回った。6月18日にはオープンAIと組むマイクロソフトを追い抜き、一時、エヌビディアの時価総額は世界トップに躍り出た。

 エヌビディアが開発するGPU=画像処理半導体は、データセンターにおけるAIの学習を支えている。現状、エヌビディアのGPUなしに、AIの性能向上は難しいといっても過言ではない。25年ごろまで供給枠は埋まっているようだ。

 26年にエヌビディアは次世代のAIチップ「Rubin」を投入する計画も公表している。ジェンスン・フアンCEOは、「1年ごとに新型のAIチップを発表し、AIの性能向上ペースが高まる」との見解を示している。

 今のところ、エヌビディアに比肩するAIチップ企業は見当たらない。米国のインテル、韓国のサムスン電子など世界の大手半導体メーカーもAI向け演算ユニットを開発しているが、エヌビディアの「H200」との、性能の差を縮めることは難しいようだ。エヌビディアのGPUは「電力消費量が多い」という課題もあるが、演算処理能力の高さで他の追随を許していないと考えられる。

 エヌビディアのGPUを活用し、マイクロソフトはオープンAIと大規模言語モデル(LLM)の研究開発を進めている。マイクロソフトの資金提供もあり、オープンAIはGPT-4oなどの新しいモデルを発表した。グーグルやメタ、アマゾンなどもエヌビディアのチップを用いて独自のLLMの開発を行っている。

 エヌビディアの演算スピードに対応できるか否かで、韓国メモリー半導体メーカーの明暗も分かれた。SKハイニックスは世界で初めてHBMを量産し、エヌビディアの要請に応えた。他方、韓国のサムスン電子はエヌビディアの求める技術要件をクリアできていないようだ。