電力消費量が少ない「NPU」開発で
シェアの奪取を目指す米AMD

 現状、エヌビディアのGPUをどれだけ確保できるかが、AI関連企業の成長戦略に影響を与えている。エヌビディアは米国政府からの指示によって、スペックを落とした画像処理半導体を中国向けに供給したが、それも品薄状態だ。中国では、留学生などを使ってエヌビディアのチップを何とか密輸しようとする企業や個人もいると報じられている。

 そうした中で、エヌビディアに対抗しようとする企業も増えている。代表格は米国のAMDだ。買収戦略でAIチップ開発体制を拡大しようとしている。まず23年10月、AMDはAIチップの演算速度の引き上げを目標にノッド・エーアイの買収を発表した。そうしてエヌビディアに対抗し、データセンター向けのAIチップである「MI300X」も投入した。

 続く7月10日、LLMの開発を行うサイロエーアイの買収も発表した。一連の買収の目的は、AIチップの開発とエヌビディアに後れを取ったソフトウエア拡充である。

 AMDはGPUに加え、人間の脳のようにデータや情報を学習し高速に処理する「NPU」(Neural Processing Unit、ニューラル・プロセッシング・ユニット)も開発している。そもそもGPUは、オンラインゲームなど画像処理向けに開発されたものだ。その後、演算処理能力の高さが注目され、AI学習に応用された。GPUの汎用性は高いということだろう。

 一方、NPUはAIに特化したチップを指すことが多いようだ。AMDは米ヒューレット・パッカードなどと連携して、NPUなどGPU以外のAIチップを開発している。他社との連携や買収戦略で、AMDはエヌビディアのGPUに比べ電力消費量が少なく、処理能力の高いAIチップを目指している。

 AMD以外にも、AIチップ開発に参入する企業は増えた。ソフトバンクグループは半導体スタートアップの英グラフコアを買収し、AIチップ開発に取り組む。米スタートアップのエスペラント・テクノロジーズは5月、ラピダスとAIチップの設計開発で協業すると発表している。