ホンダが中国で生産能力を削減するワケ
幅広い分野で中国事業のリストラは増加

「このままだと、自力で開発し磨いた製造技術が中国側に流出してしまう」――。そうした危機感や中国市場の動向から、中国事業の縮小を実行する日本企業は増えている。

 ホンダが中国におけるガソリン車の生産能力を削減する方針を明らかにした。中国政府がEVへ注力していることが理由の一つだという。

 2000年代以降、わが国の自動車メーカーは中国政府の要請に応じて現地企業と合弁事業を展開してきた。その中で、中国の自動車企業は、内燃機関などのすり合わせ製造技術を少しずつ習熟していった。今のところ、日本のハイブリッド車のようなエンジンとモーターの滑らかな駆動の連携を実現することは容易ではないようだが、エンジン車、エンジンとモーターを組み合わせたPHV、EVの大量生産、コスト面で中国勢の競争力は高まった。

 その結果、EVを中心に中国の自動車販売市場は、世界の主要メーカーから現地の新興企業までが値下げを行い、血で血を洗うレッドオーシャンと化している。それでもなお、中国政府は政府系から主要民間企業まで、EVの生産を支援している状況だ。

 ホンダや日野自動車などは、中国勢の追い上げへの対応や、他の市場開拓のため中国事業のリストラを決めたと考えられる。自動車部品や石油化学分野でも、中国企業との競争激化、景気減速などで事業の縮小や減損を計上する内外の企業が増えている。例えば7月、独ダイムラートラックは中国合弁事業に起因する減損を発表した。

 また、中国での販売不振を理由に、化粧品大手の資生堂が約1500人の早期退職を募った。仏LVMHグループなど海外の高級ブランドでも、中国の販売が減少したことで業績への懸念が高まっている。中国では不動産バブルが崩壊し、政府による共同富裕策や改正反スパイ法などの影響から、消費者心理が停滞していることも逆風だ。

 中国から脱出するのは主要先進国の企業だけではない。韓国サムスン電子は、中国からインドやベトナムに、スマホなどの生産拠点を移管した。また、EV大手のBYDや車載バッテリーメーカーのCATLなど、有力な中国企業は海外に進出している。中国企業にとっても、自国の需要が停滞していることへの対応は急務だろう。