日本製鉄が中国合弁事業を解消
先進国企業のライバルになった中国企業
わが国の鉄鋼・自動車などの分野で中国事業の縮小を発表する企業が相次いでいる。その背景の一つとして、中国企業の技術面でのキャッチアップが進み、わが国の企業にとって中国企業がライバルになっていることがある。
日本製鉄が中国合弁事業の解消を発表したのは、まさに象徴的だ。7月23日、日本製鉄は、宝鋼日鉄自動車鋼板有限公司(BNA)との合弁を解消する方針を明らかにした。1977年に中国の要請で新日本製鉄(当時)は、中国に製鉄技術を供与した。技術指導などに携わったわが国側の人員は延べ1万人に達したとみられる。そうして85年、1号高炉に火が入った。
その後、中国は改革開放を進め経済成長が加速し、中国の鉄鋼需要は増えた。2004年、中国の自動車需要の増加に対応するため、日本製鉄は国有の宝山鋼鉄とBNAを合弁で設立した。
リーマンショック後、中国政府は4兆元(当時の為替レートで57兆円程度)の経済対策を実施。鉄鋼生産は急増し、過剰生産能力が顕在化した。一時、中国の粗鋼生産能力は年12億トン(わが国は1億トン程度)に達し、うち30%程度は未稼働の状態が続いた。
中国政府は過剰生産能力を抱えた企業を統合し、コスト削減とシェア拡大を目指している。16年、宝山鋼鉄は武漢鋼鉄を吸収合併し現在の宝鋼が誕生した。中国政府は、大量生産を補助金などで支援し、安価かつ相応の品質を備えた製品が中国内外の市場にあふれ出た。
21年、日本製鉄は、宝鋼などがハイブリッド自動車に用いる「無方向性電磁鋼板」の知的財産を侵害したとして特許訴訟を起こした。この製品は、電動車のモーター製造などに欠かせない。日本製鉄は国内企業との訴訟を終了したが、宝鋼に対する訴訟は継続中のようだ。合弁事業を運営し収益を得るパートナーから、競争上の脅威へ、中国企業が変質している。