ロボットと「協働」できる人は
結果的に生き残れる

製造現場で働く「ブルーカラー社員」はAI・ロボットに仕事を奪われる?研究者の予測結果は…10年後のハローワーク』(川村秀憲 著、アスコム、税込1650円)

 これはコストカットや安全性向上の意味でも重要ですが、むしろ建設現場で長い間続いてきた人手不足の解消方法として期待されるでしょう。

 建設現場だけでなく、日本のブルーカラーは慢性的な人手不足に悩まされてきました。世界有数のロボット密度であっても、まだ人手が足りないのです。しかし、もはや解決のための決定打はありません。いまさら出生率の低さに大騒ぎしたところで、回復には数十年単位の時間が必要になります。

 外国人労働者を移民として動員するか否かについては、労働力不足の面だけではないさまざまな議論が必要になります。もっとも、そうこうしているうちに外国人労働者が日本を「選んでくれる」魅力を保てなくなれば、いよいよ手詰まりです。

 AIとロボットの発展と融合は、この部分において大きな福音になると予想します。むしろニーズの大きい日本が、この分野での研究や実際の応用をリードしていくことを考えるべきでしょう。

 その具体的な姿は、いままでは「作業」だけを担ってきたロボットに知能がつくことで、より知的な作業を素早く正確に行えるようになるイメージです。

 たとえば京セラでは、2023年から、人が行ってきた作業を代替する「協働ロボット」を運用するシステムを売り出し始めました。AIを用いて画像を認識するソフトをクラウドで供給すると言います。

製造現場で働く「ブルーカラー社員」はAI・ロボットに仕事を奪われる?研究者の予測結果は…出典:『10年後のハローワーク』(川村秀憲 著/アスコム)

 こうした流れが加速していけば、いままでは人の判断が必要だった現場に、さらにロボットの普及が進むでしょう。また、AIロボットを操作することで生産が可能ならば、オペレートは現場にいなくても可能になります。いわば「ブルーカラーの在宅勤務」も実現するかもしれません。

 日本の少子高齢化には、もはやこうした方法で立ち向かうしかありません。見かけ上のAI化率は高いでしょうし、高めるべきでしょう。

 その結果として供給力が保たれ、人材のボトルネックが解消されるのであれば、生産現場は増えていくと考えられます。ホワイトカラーに比べてメーカーで働く人たちの仕事は、結果として残りやすいと推測します。

 一方で、企画開発などの仕事はホワイトカラーと同じです。他人にできない発想を持つエンジニアは、AIで代替されにくいばかりか、AIを利用していまよりもさらに効率よく仕事ができるようになるでしょう。